中国の退耕還林政策は、黄河や長江の上流域を主な対象として、急傾斜地の耕地や放牧地を林地に転換し、2000年以降のおよそ10年間で3200万ヘクタールもの新規造林を目標とした未曾有のプロジェクトである。 本研究は、退耕還林政策の中心となった黄土高原地域の農村を対象として、広域調査によって農村の類型化をした後に、3-5村を事例として選定し、退耕還林実施前後の土地被覆変化、造林地における樹木の活着率、生業変化、農村経済振興策の成否を現地調査によって明らかにし、退耕還林政策を環境保全効果と農村振興策の成否の両面から総合的に評価することによって、中国の環境問題・貧困問題をめぐる諸分野の研究に学術的に貢献しようとするものである。 本年度は研究とりまとめをすすめるとともに、現地調査をおこなって樹木活着率や生業変化についてデータ補完をおこなうとともに、長期の土地被覆・土地利用変化に関する資料収集をおこなった。その結果、退耕還林以前の土地利用の変遷を、チェックダムや段畑造成を主な対象として大まかな傾向をつかむことに成功し、これまでおこなってきた退耕還林をめぐる環境変化の評価に位置づけを得ることができた。成果発表は学会発表および著書の刊行によって実施し、当初の計画通りの成果を得ることができた。
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