研究課題/領域番号 |
23401005
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 宮崎公立大学 |
研究代表者 |
李 善愛 宮崎公立大学, 人文学部, 教授 (90305863)
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研究分担者 |
藤永 豪 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (00409955)
野中 健一 立教大学, 文学部, 教授 (20241284)
池口 明子 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (20387905)
江上 幹幸 沖縄国際大学, 公私立大学の部局等, 教授 (30320518)
鯵坂 哲朗 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40144349)
川瀬 久美子 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (40325353)
佐藤 慎一 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (70332525)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 干潟の多様性 / 礁池干潟 / 泡瀬干潟 / 姫島みつけ干潟 / 環境適応 / 生物地理学 / 自然保護 / 文化資源 |
研究概要 |
本研究は西太平洋島嶼地域を中心に沿岸環境のうちとりわけ看過されてきた島嶼地域の干潟に着目し、生物地理学的な観点から文化の環境適応的側面の分析手法の進展を図ることで、各地の干潟生物とその利用にかかわる文化の歴史的・地理的固有性と連続性を示し、干潟の保全や持続的開発に資する文化資源を提供することを目的としたものである。 その中で、当該年度は日本、インドネシア、フィリピンで調査を行った。こうした島嶼地域の干潟調査をとおして、干潟地形の多様性をみつけることができ、干潟に対する定義の再検討や干潟に対する細かい地形分類の必要性を地形学会に提案することができた。 一般的な干潟は河口域や湾の奥部に川から流れ出た砂泥が潮汐によって再移動し広くて平坦な砂泥地を形成し、広意には浅海域、河川や氾濫原と連続した背後の後背湿地を含むことがあり、その形状と形成要因によって、河口干潟、前浜干潟、潟湖干潟に分けられている。しかし、島嶼地域にある礁池の平坦地におけるサンゴ礫などの堆積には波浪によるサンゴの破壊・移動が大きく関係し、そのベースになる平坦地は浅海底のサンゴの成長によって形成されている、つまり「生物的営力と波浪」が大きく関わっているので、従来の干潟のカテゴリに礁池干潟を加えることを提案した。 また、地形学事典での干潟は「潮間帯・砂泥の堆積・平坦値」となっているが、干潟は自然保護や生物の生産の場として利用するなど重要な場であることから地形図にも干潟を記載する必要性があることと、干潟は砂浜との明瞭な傾斜変換点があるので、丘陵地のミクロな地形分類のように、干潟もさらに細かい地形分類をする必要性を促すことまでできた。 他に、干潟の藻類や貝類相の生物地理の検討のため、現地での流通やサンプルの収集も行い、分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では西太平洋島嶼地域の干潟生物相のうち、漁業文化形成にかかわる生物に着目し、その生物地理と文化地理の対応を試みるため設定した課題をほぼ取り組むことができた。 そして、干潟の微地形・生物相・人間活動からみた地生態区分を研究成果と従来の議論との照合せをとおして島嶼地域の干潟の定義・分類の再検討を行った。また、各地生態区分において代表的かつ資源利用活動にかかわる藻類・貝類・魚類の形態的な比較、地域的広がりをもつ種群の遺伝的構造とその分布についても検討を行っている。さらに、当該地域の干潟の資源利用文化のうち、製塩・採貝・採藻・建干網などの漁業技術についても調査を行ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては干潟の藻類・貝類の生物地理の検討と干潟利用の技術・社会と環境適応の分析のため、台湾・インドネシア・パラオにおいて現地調査を分担して行い、補充調査に基づいて従来までの研究成果を、各自が所属する学会などで発表するほか、日本語・英語の報告書としてまとめる。
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