本研究ではタンザニア南西部ムビンガ県K村での開発実践を対象とし、諸アクター間の相互作用によって創出される動的で定性的なプロセスを継続的にモニタリングしてきた。最終年度である2014年度は、8月14日から9月16日までの期間タンザニアにてフィールド調査を実施した。 ムビンガ県K村では、1999年から2004年にわたり実施された地域開発プロジェクト終了後も住民主体の内発的な諸活動が展開されてきたが、本研究期間中は、主に給水事業と小水力発電事業に焦点をあてモニタリングを行ってきた。1)2000年代半ばから住民主体の給水施設建設が行われてきたが、給水事業における内発性の発現過程を村区ごとに比較考察し、水場の設置状況とその後の管理・運営状態を整理・分析したうえで、開発実践における水資源利用と管理についての論文を執筆中である。2)小水力発電事業は、水力製粉機設置から10年強の日々を経て、水力製粉機の「施設」と「住民組織」の双方を基盤とし着手された事業であるが、K村及び流域の村々や関連機関等での聞き取りを行った。水資源を利用した開発実践における争いと解決のプロセスと「協治」の可能性を検討した論考を書籍の1章として刊行予定である。3)農民グループについては、プロジェクト時代に組織されていた男女混合の農民グループに対し、性別役割分業を反映した形でのグループ形成がみられ、男性はコーヒー栽培や販売を目的とするグループを、女性は世帯の生計向上を目的としたグループを組織する傾向がみられるようになってきた。こうしたグループ形成の背景、活動目的・内容、メンバーシップやリーダーシップ等に焦点をあて聞き取り調査や参与観察を行った。4)村・村区レベルでの住民主体の諸活動と世帯レベルでの生計戦略の双方を踏まえた事例分析を通し、アフリカ農村における内発的発展に関する理論的な枠組みを今後も継続して検討していきたい。
|