研究課題/領域番号 |
23401010
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
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研究分担者 |
林 範彦 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (40453146)
富田 晋介 京都大学, 東南アジア研究所, 特任准教授 (60378966)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 多言語社会 / 東南アジア大陸部 / 言語の多様性 / 社会ネットワーク |
研究概要 |
2012年度の活動は、調査においても論文執筆においても、実り多いものとなった。ラオスとタイにおけるフィールド調査が去年の活動の中心となった。日本側の研究協力者と現地の協力者、特にラオス国立大学、と共同で行ったフィールドワークは多くのデータを出した。世帯調査によって、民族間通婚と言語使用状況に関するミクロレベルのデータと、4つの村の様子を現地の言語景観における位置づけを明らかにするデータと、2つのレベルの聞き取りを行った。 代表者は、2012年中に本研究に関する投稿論文2本と、専門百科事典へ記事1本が、3本とも査読付きでアクセプトされた。 地域の社会変容の歴史的な流れと追求しつつも、世帯内の時代間の言語伝達における変化を把握することができた。日常的な経済活動の中での言語の位置と、現地地域住民から見た経済的戦略としての言語使用というのも、明確になってくる。しかし、経済だけでは説明しきれない文化的な要素の重要性も顕著である。急速に変わりつつある社会経済状況下でも、伝統文化や在来生態知識の維持も考慮されるのも確認された。これらは、地域の社会・経済ダイナミズムにどうのように貢献するか、という問いについては、3年目の詳細な分析によって明らかにされることが期待される。 このデータを、共同ワーキングペーパーシリーズという形で文章化した。今の段階は、4つのワーキングペーパーが完成している。そのうち、投稿する予定の論文は2本ほどある。ラオス国立大学とタイにあるマヒドン大学にて、セミナーを設けて発表する機会もあり、成果発表への期待を高めることもできた。 このように、目的の一つである、「多言語社会の民族誌的記述」は実現に近づいてきた。「社会ネットワーク分析」というもう一つの目標にむけて、基盤となるデータが集まったところで、再びフィールドで細かいデータを取る段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
去年は、集中的にフィールドワークを無事に行うことができたので、本研究の核心となるデータは蓄積されてきている。主にラオス中心に行った調査は、5か村の言語使用状況・生活生業の現状と近年の変化を押さえることもできた。日本および現地における協力者も活躍しており、最後の補足調査とそれにつながるまとめの仕事に入る体制はできていると思われる。特に問題ないというのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
2013年10月ごろまで、補足調査が続くことが予想されるが、まとめの作業には、もうすでに入っている。成果として出る本の章立ての案もあがっているので、早いうちに本格的に執筆にも入れる状態である。12月ごろに、現地でワークショップを行い、現地の協力者や関係者向けに成果を発表する。その後、2013年の2月ごろに日本でも発表会を開催する予定している。本の出版のタイミングはまだわからないが、今年度中にはデータ収集、分析、そして執筆がほぼ終了しているはずである。
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