研究課題/領域番号 |
23401013
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水野 広祐 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (30283659)
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研究分担者 |
渡辺 一生 京都大学, 東南アジア研究所, 研究員 (30533012)
遠藤 尚 高知大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (40532156)
小座野 八光 愛知県立大学, 外国語学部, 准教授 (60305513)
甲山 治 京都大学, 東南アジア研究所, 准教授 (70402089)
河野 泰之 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (80183804)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地域研究 / インドネシア・ジャワ / 経済史 / 生存基盤持続型発展 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 農家経済調査 / 長期データ |
研究概要 |
2012年の特に7月から10月初めまでの間に、インドネシア・中ジャワ州プカロンガン地方、プマラン県の植民地期の旧チョマル副県、今日のチョマル郡など3郡の6カ村において、1000世帯に対する農家経済調査を実施した。また、1000世帯の農家経済調査データのSPSS統計ソフトに入力を完了した。 この2012年の1000世帯のデータは、1904年に同地域において、オランダ糖業シンジケートによって実施された2800世帯余りに対する悉皆調査結果、および1990年に本科研参加者(加納・水野ら)が、実施した500世帯に対する調査結果と比較することを意図した。 2012年の調査は、京都大学東南アジア研究所、ガジャマダ大学およびアムステルダム大学と共同で実施し、植民地期以降続いたサトウキビの作付強制ともいうべき住民糖業制度(TRI)が1998年に廃止され、またこの間、地方分権化や近年の経済成長がどのように農村世帯経済に影響をもたらしているのかを検討した。 調査の結果、人民糖業制度の廃止後、住民は水田における甘蔗栽培をほぼ中止し、その代り、稲、赤玉ねぎやトウガラシなどの野菜の栽培が拡大し、一方、サトウキビは畑作物として一部の地域で栽培されていることが明らかになった。稲作は、1990年時点と異なり種もみの選択は住民に任され、多様な稲が栽培されている。 土地所有を見ると、調査1000世帯の85%近くがすでに耕地を所有していないことが明らかになった。しかし、土地利用はレンガつくりを含め多様化し、様々な農村内非農業部門が展開している。土地利用の多様化の一形態として、ジャワセンゴンやジャボンなどの早成樹種を栽培する世帯が多くみられた。 これらの結果、1990年と比較すると所得の向上と消費ブームが見られ、その結果60%の世帯がオートバイを所有していること、携帯電話は75%の世帯が所有していることなどが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2012年度は予定していた、旧チョマル郡6カ村における農家経済調査を実行でき、また調査票データの入力を完了した。これは、予定通りの進捗度であるといえる。2012年1000世帯の調査は、ガジャマダ大学およひアムステルダム大学と共同で実施し、特に、ガジャマダ大学からは人類学科や歴史学科の学生が多数調査に参加して実施した。これらの農家経済は、調査世帯の構成、世帯員の教育や職業および土地所有、稲作経営、甘蔗作経営、その他の農業、農業賃金労働、工場労働、農村内非農業部門、労働力移動、さらにジャボンやジャワセンゴンなどの植樹のデータを含んでいる。6カ村における調査世帯サンプル数は、各調査村の人口数に比例させて決められまた、ランダムサンプリングによって調査世帯を選択した。この1000世帯に中には、1991年の調査で対象になった世帯も含まれるのでこれらは直接、1991年と2012年の間の土地所有や世帯所得などの比較を行うことができる。 また一昨年度、中ジャワ州のプマラン県やプカロンガン県を中心とする北海岸地方から始まって南の地方について、航空写真と衛星画像を購入した。 これらも、研究計画が予定どうり進んでいるということができる。 さらに、調査村地方の森林減少について、19世紀以降フォローした。また、これらの森林減少に対応した森林保護管理政策について、植民地期からの変遷をフォローした。これらも、研究計画どおりであり、移住から本研究プロジェクトは研究計画どおり進捗しているということができる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、まず、これまで収集し統計ソフトSPSSを用いて入力したデータの、研究プロジェクト参加者の間で共有する作業を進める。 次に、2012年に実施した1000世帯に対する農家経済調査の補足調査である。これらには、農家系譜調査や、村落行政、農業賃金労働、森林増加などに関する社会経済および環境問題が含まれる。 さらに、中ジャワ北海岸の19世紀の地図や、2011年度に収集した衛星画像および航空写真を用いたこの地方の土地利用あるいは森林減少ないし増加に関する分析、水路や館街路の変遷に関する分析などを実施する。 また、2012年の農家経済調査結果の分析を実施する。それは、稲作経営、甘蔗栽培、非農業部門、世帯や人口の構成、出稼ぎなどを分析する。これらは、1991年の調査結果や1904年の調査結果と比較検討される。 また、中ジャワ北海岸から南のインド洋岸までの地域について、19世紀初めからの自然災害の履歴や、疫病の履歴を検討したい。さらに、19世紀から今日までの人口の変化、土地生産性の変化、耕地面積、森林面積、糖業や稲作などの農業や林業、その他の農村内非農業部門の発展や、森林や土地の保全や水管理の歴史などを検討したい。; これらを踏まえて、2013年12月などの時期にインドネシア・ジョクジャカルタにおいてセミナーを実施する。また、これらの研究成果について、本科研参加者は積極的い論文を執筆する予定である。
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