研究課題/領域番号 |
23401016
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
地域研究
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研究機関 | 京都市立看護短期大学 |
研究代表者 |
磯邉 厚子 京都市立看護短期大学, 看護科, 准教授 (40442256)
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研究分担者 |
三木 真知 京都市立看護短期大学, 看護科, 教授 (20190613)
伊藤 良子 京都市立看護短期大学, 看護科, 准教授 (20300238)
植村 小夜子 滋賀県立大学, 人間看護学部, 准教授 (10342148)
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キーワード | スリランカ / 農園地域 / 母子保健 / 栄養不良 / 潜在能力アプローチ |
研究概要 |
2011年、農園の母子の栄養不良の原因を明らかにするために、政策実施機関である保健省、プランテーション産業省、ユニセフなどの国際援助機関やNGOを訪問し、サービス体制の実態を把握した。政府は国全体の栄養問題に取り組んでおり、幼少時の貧血、食文化、人々の関心の低さ、知識を得ても行動化できない等の課題をあげている。公的機関の栄養士は国内に5名のみで専門的手段を構築し難い状況にある。 プランテーション産業省では、農園の住居や労働環境の改善に取り組んでいるが未だ充足されていない。 農園の多いヌワラエリヤ県が属する中央部州庁の母子保健課を訪れると、2007年公的機関と農園会社の統合により農園に行政が入るようになった。しかし、行政職員が言葉の壁(タミル語)や、住居・交通アクセスの不便さにより農園への派遣を望まなく、政策を届き難くしている。農園では栄養不良に関連する水を媒介とする感染症、呼吸器疾患、成人のアルコーノレ依存症の問題があるという。正規の教育を受けた助産師を、今後農園へ派遣する予定である。2007年以降、栄養不良の妊婦にミルク配給200cc/日が始まり、栄養改善の兆しがある。一方、健診中の妊婦19名に聞くと、半数が流産などの経験をもっていた。過酷な農園労働や経済不安を訴えており、妊婦の健康管理のプロセスが保障されていない。幾つかのNGOは食糧セットの配給や体重測定の指導に取り組んでいるが、母親の労働時間の調整不備、教育の低水準により効果が遅いという。県レベルで様々な健康プログラムが企画されており、母子の栄養改善には総合的な保健プログラムが必要である。 調査結果は潜在能力の観点から分析し、栄養不良の成立過程を明らかにする。研究分担者及び連携研究者も文献検索協力や食品市場調査を整理しており、2012年の論文や学会発表等に反映させる予定である,
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
母子の栄養に関する医療福祉サービス提供主体(中央政府:及び地方行政機関、外国援助機関、農園福祉事務所、NGO)を訪問し、母子の栄養政策及び課題を情報収集できた。フィールド調査では農園地域を統合する県レベルの健康プログラムの内容や農園の住居環境、妊婦個人の健康状態及び経済的社会的背景の実態を調査できた。
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今後の研究の推進方策 |
農園地域の栄養不良は母親だけでなく5歳未満児にも著明にみられ、今後、子の発育状態と背景を集団調査する。また低体重児出産や死産の既往の女性に対し、現地助産師を通じて健康管理や生活の方法を追調査する。さらに母親の栄養不良の要因(政策の行届きの有無や個々の生活実態)を詳細に知るため個別訪問を実施するが、母親の労働時間内調査は現地の協力者(医師や助産師丸農園会社、現地NGO、家族)が必須である。とくに母親の身体活動量の測定は本人及び農園会社等の了解が必要と考えられる。事前の同意を確認したうえで実施する。
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