本研究の目的は、母子保健状況が著しく劣悪な西アフリカのリベリアとシエラレオネにおける産科瘻孔(フィスチュラ)という「疾患」に注目し、その疫学的動向とそれに起因する「問題」を、地域研究、ソーシャルワーク、ジェンダーといった多角的な視点から調査研究することにある。 本研究は2014年度が最終年度の予定であったが、同年に両国で突如発生したエボラ出血熱の感染拡大のために、同年度については当初予定していた現地調査を実施できず、研究費を2015年度(平成27年度)に繰り越した。しかし、エボラ出血熱の感染拡大は2015年度に入っても終息しなかったため、同年度についてもリベリアとシエラレオネでの現地調査は断念せざるをえず、それに代わって、アフリカの産科フィスチュラに関する研究が盛んで資料も豊富なイギリスと南アフリカで聞取調査ならびに資料収集を実施した。イギリスでは、世界有数の医学史図書館であるウェルカム図書館で産科フィスチュラ対策に関する貴重な史料を入手することができた。また、南アフリカでは、産科フィスチュラ問題に詳しい専門家から有用な情報を提供を受けることができた。
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