研究課題/領域番号 |
23401020
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊東 乾 東京大学, 大学院情報学環, 准教授 (20323488)
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研究分担者 |
添田 喜治 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (10415698)
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キーワード | オペラ劇場 / 西欧教会 / バイロイト祝祭劇場 / ロマネスク・ゴシック聖堂 / 宗教改革 / 音楽音響 / 非線形動学解析 / 音響脳認知 |
研究概要 |
本研究は内外の教会(国内については対照測定として寺院の協力も得る)オペラハウスをフィールドと、そこでの人声、器楽演奏の動的振る舞い(ダイナミクス)を音楽の観点から従来の建築音響のノウハウと理論的フレームワークを拡大して捉え、建築音響の枠組みでは不可能であった音楽演奏に直接役立つ新たな測定評価法を確立する。それらを用いて内外の教会堂、オペラハウスでの演奏ダイナミクスを測定・評価し、その特性を生かした動的再現をもって再現性を確認する。 具体的には、従来の建築音響で用いられる「1無指向性音源+1受音点」すなわち12面体スピーカなどを代表点一箇所に設置、ダミーヘッドマイクロホンをやはり代表点一箇所に固定してインパルス応答諸パラメターを測定するのではなく、教会内(あるいは寺院内)また劇場内の異なる地点に異なる方向を向けて指向性スピーカーおよび奏者・歌い手・聖職者などが配され、本当に実際の儀礼や演奏が行われる状態での時間的空間的なダイナミクスを直接測定する新しいパラダイムで取り組む。とりわけ歌手や奏者、聖職者など人間を音源とする場合同一のパフォーマンスを繰り返す事は困難で、従来はそれが再現性を欠くとして理工学のターゲットから外される傾向があった。音楽の観点からは無指向性スピ ーカー1点の音響特性は実演の参考にならずこれらのテクノロジーを新たな音楽あるいは儀礼の品質向上に生かすことが出来ない。我々は器楽奏者、歌手さらには聖職者を含む発音被験者に無教室内で演奏や法要を営んで貰い、楽器音や人声自体の基礎解析を線形・非線形(相関)解析双方から行うとともに、浄土真宗各派寺院、新国立劇場等にご協力を頂き、建築物の物理パラメーターに留まらず複数位置・方向に向けられた奏者・唱者ならびに指向性音源の音響ダイナミクスを複数受音点で観測し、線形/非線形解析により効果のメカニズムを明らかにし、再現性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定フィールドとなる建築物のうち、実働しているオペラ劇場、すなわち新国立劇場、バイロイト祝祭劇場おのおのについて、測定のための借用可能な日程を確保するために年度をまたぐ事となり、現場での測定そのものは当初予定よりも遅れ勝ちになっている。これは同時に予備実験、準備などに時間と労力を傾注できるということでもあり、解析結果から非常に有益な成果が得られていることから、おおむね順調な進展と捉えている。
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今後の研究の推進方策 |
新国立劇場での測定では、従来からの建築音響で標準的な「1無指向性音源+ 1受音点(ダミーヘッドマイクロホンによる両耳測定)」を超えて「複数の指向性音源・方向を考慮する + 複数の受音点(3台のダミーヘッドマイクロホンを同時並列で使用する)」による、劇場内の時間的・空間的なダイナミクスを考慮した測定を初めて行い、受音点位置の差については十分な成果が得られた。反面、両耳測定に用いるダミーヘッドマイクロホンは左右2チャンネルであるため、同一受音点で音源位置の高さ方向の変化を抽出することは原理的に困難である。これについては垂直方向の干渉計を新たに設計して、新国立劇場での測定で動作確認し、バイロイト祝祭劇場、ケルン大聖堂など欧州の教会、オペラハ ウスでの測定に備えるものとする。
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