研究調査対象の言語(セイリッシュ語,ハイダ語)は,いずれもいわゆる複統合的言語であり,従属節の構造も形態論的に複雑である。いずれの言語でも,構造上は従属節と考えられるものが,文法上明確な主節がなく現われることがある。日本語で言われるいわゆる言いさしの現象と類似している文法現象である。この現象がどのような使われ方をしているかという点については,通言語的に比べてみると多くの類似が見られた。すなわち,例えば,警告や注意喚起,あるいは願望などである。その一方で,より広いコンテキストに結びつけるために主節の形式ではなく,従属節の形式を取ることがあることも分かった。
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