本研究(グローバル・ヒバクシャ・プロジェクト)では、新たな国際的ヒバクシャ研究の構築を目指し、これまで世界各地のヒバクシャ・コミュニティにおいて、ヒバク体験がもたらした影響や各コミュニティの社会的・政治的活動を多角的に調査・分析し、各地のヒバク体験を歴史的・比較文化的に検証してきた。 3年目である本年度は、すでに調査したいくつかのヒバクシャ・コミュニティにおいて追跡調査を行ったり、英国、フランス、ニュージーランド、オーストラリアでは、核実験に関与した退役軍人からの聞き取り調査を行った。また新たに、フランス領ポリネシアのヒバクシャ・コミュニティでの聞き取り調査や、ヒバクシャ問題に関する提言を行うとともに、現地大学の研究者とも意見交換を行った。加えて、1966年、米軍機墜落事故により多くのプルトニウムが飛散したスペイン南部のパロマレスでも調査を行い、ヒバクシャやその2世、及び地元の活動家、ジャーナリストからも聞き取り調査を実施した。 また最終年度として、次世代へのヒバク体験の継承を目指し、1954年のブラボー水爆実験から60年を迎えたマーシャル諸島では、ヒバク3世の世代を集めたワークショップを行い、若い世代がヒバク体験を継承するための方法論を紹介した。さらにスカイプを利用してマーシャル諸島やオーストラリアのヒバクシャを親に持つ若者、及びワークショップメンバーが参加する国際的なウェブ会議も開催し、ヒバクシャ・コミュニティの国際的連携を構築した。当プロジェクト研究は日本のみならず、世界各地のメディアでも取り上げられたほか、ジャーナルへの論文掲載や国際的な学会へも招待を受け論文発表を行うなどした。
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