研究課題/領域番号 |
23401030
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
沼本 宏俊 国士舘大学, 体育学部, 教授 (40198560)
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研究分担者 |
柴田 大輔 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (40553293)
山田 重郎 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (30323223)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 考古学 / アッシリア / 粘土板文書 / 楔形文字 / シリア / テル・タバン / メソポタミア / 中期アッシリア |
研究概要 |
シリアの政情不安のため本年度もテル・タバン遺跡の発掘調査は中止した。そのため、テル・タバンの北部に隣接するトルコ南東部の遺跡調査を実施した。調査の目的は、古代のタバトゥム/タベトゥ(テル・タバン遺跡)を取り巻く地政治学的環境を明らかにすることである。より具体的には、1)テル・タバンの北に広がるいわゆるハブル(メソポタミア)平原をのぞむトゥル・アブディンの山岳地帯とティグリス上流域の考古学的環境とテル・タバン周辺の物質文化の近似性と相違を考察すること、ならびに2)前2千年紀半ばからアッシリア王国の広域支配の一部にあったテル・タバンの地政学的環境を正しく把握すべく、ハブル川の北を東西に走るアッシリアの行軍・交易ルートのシステムを理解することである。 以上のような目的のため、2013年3月に二週間、ディヤルバクル市、マルディン市、ミディヤト市、バットマン市の遺跡(ギルナバス、ギリジャノ、ジヤラトテペ、ウチテペ等)並びに交通網の調査を行った。 これらの調査を通してテル・タバン周辺(ハブル流域)とトゥル・アブディン南部の山麓地域の物質文化の際立った近似性、ならびに前者とティグリス川上流地域との物質文化上の距離感が確認されると同時に、アッシリアの西方拡大のロジスティックスについての地理的・環境的理解を深めることができ、今後のテル・タバン出土遺物の研究に向けて有用なデータが蓄積された。 [国内での研究] 国内に保管しているテル・タバンの調査で出土した古バビロニア~新アッシリア時代の約3000点の土器片の整理を前年度に続き行った。テル・タバン文書に基づいた古バビロニア時代(前18世紀)、中期アッシリア時代(前13~11世紀)の北メソポタミアの歴史と社会に関する研究、その成果となる学術論文を作成中である。05~10年度の発掘調査報告書の刊行に向けての準備(図面、原稿、版下作成等)を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度もシリアの政情不安により、テル・タバン遺跡の発掘調査は実施できなかったため、トルコ東南部の調査を実施した。調査の結果、ハブル川上流域とティグリス川上流地域との物質文化の類似性を確認し同時に、アッシリアの西方拡大の地理的・環境的理解を深化することができた。前2千年紀の拠点都市テル・タバンとの歴史・文化的関連の究明や蓄積した研究成果をより深化させるうえで有用なデータを得ることができた。同地域は古代メソポタミア北西部の歴史考古学的研究を遂行するうえで不可欠なフィールドである。
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今後の研究の推進方策 |
23年度から続くシリアの政情不安は、依然好転する兆しがなく、今後のテル・タバン遺跡の発掘調査は不可能と思われる。故に、25年度もテル・タバンと最も関連性が高い前2千年紀初頭から前1千年紀の歴史時代の生活層を包含するトルコ東南部シリア国境沿いのハブール川上流域に分布する遺跡群に重点を置き、8月中旬から約一ヶ月間の遺跡踏査を実施する。さらに前2千年紀半ばからアッシリア王国の広域支配の一部にあったテル・タバンの地政学的環境を正しく把握すべく、ハブール川の北を東西に走るアッシリアの行軍・交易ルートのシステムを理解するため、同地域内の交通網の調査を行う。 トルコ東南部地域の調査予定遺跡: ハブール川上流域:マルディン遺跡、オルタキョイ遺跡、ギルナバス遺跡、クジルテぺ 遺跡、ダラー遺跡、ミデヤト遺跡、サウル遺跡等。チグリス川上流域:ギリジャノ遺跡、ジヤラト・テペ遺跡、ウチテペ遺跡等。バリフ川上流域:ハラン遺跡等。 上記の調査以外に、同じ北西メソポタミアに属すイラク、スレイマニア県での遺跡群の踏査を可能であれば予定している。
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