最終年度である本年度は、昨年度までに明らかにしたオマーン沿岸域の港湾都市構造(マリーン・イスラーム)文化の周辺域の確認と、拡大調査計画策定のため、①イエメンおよびエジプトの紅海沿岸域文化遺産情報集積とGISデータベース化、②パキスタン南岸、およびインド西岸における文化遺産情報集積およびカウンターパートとの共同研究調整、③モルジブにおける関連遺跡一般調査を実施した。 ①については、エジプト紅海沿岸域については、エジプトNARSSおよび日本学術振興会カイロ研究連絡センターとの協力により、文化財分布および地形情報を集積し、GISデータベースと衛星データ集積を実施した。イエメンについては、上智大学および一橋大学と協力し、既存の地図データのデジタル化および文化遺産情報の集積をおこなった。 ②については、総合地球環境学研究所および国際日本文化研究センター、インドバローダ大学と連携し、インダス文明期およびそれ以後の沿岸集落一般調査と情報集積を実施した。その中で、25年度以降、具体的な調査地としてグジャラート州カーンメール遺跡およびドーラヴィーラ遺跡の調査を決定し、共同調査継続を進めている。 ③については、モルジブ国歴史資料館と協力し、現在の文化遺産情報集積と具体的な一般調査を実施した。一般調査では、ハーリフ環礁・ハーダール環礁・マーマクンドゥ環礁・ラーム環礁の環礁において、イスラーム期およびそれ以前の仏教寺院関連遺跡の確認を行った。特に、モルジブ南環礁域のラーム環礁には大規模な水没した仏教寺院の存在を、中央環礁域には中世期イスラーム交易期における沈船を確認し、オマーン・スールで確認した6世紀前後から中世期までの交易関連遺跡をアラビア海をまたいたモルジブでも確認、調査準備を進められた成果は大きい。 本研究は、今後アラビア海東域において拡大調査を実施し、西域との比較研究を深化させたい。
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