研究課題/領域番号 |
23401034
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
徳澤 啓一 岡山理科大学, 総合情報学部, 准教授 (90388918)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 伝統的土器製作 / ラオス南部 / ラオス中部 / カンボジア北部 / タイ中部 / タイ北部 |
研究概要 |
当初計画において、2012年度は、カンボジアを中心的フィールドと位置付けていたとおり、カンボジア国内及び国境を接する隣国の隣接地域の現地調査を展開した。また、カンボジア国内の土器製作があまり残されておらず、代替措置として、国境を接するラオス南部及び中部地域の土器製作を探索することになった。また、急速に解放されつつあるミャンマーにおける現地調査を見越して、隣接するタイ国境地域の現地調査に着手した。 具体的な月次の調査実績は以下のとおりである。 4-5月、カンボジア北部と隣接するラオス南部地域の現地調査を実施し、パクセー県、アッタプー県、サラワン県の土器製作の村寨を訪問した。 8月、2011年度におけるフィールド調査を補足するため、マレーシアの現地調査を実施しようとしたものの、体調不良によって、すべての日数を調査に充てることができず、半島部のパハン州の調査で打ち切ることになった。 10月、ミャンマーにおける現地調査を見据えて、タイ中部における現地調査を実施しようとしたものの、本学の緊急会議に召集されたため、現地調査を中断し、緊急帰国した。11月、10月の現地調査の不足分の調査を行うとともに、ミャンマー東部と国境を接するタイ北部メーサリアン、メーチャム周辺の山地民の土器製作を踏査した。 12-1月 カンボジア国内の現地調査を実施した。これまで、タケオ州及びカンポート州における南部地域の調査を実施し、中部及び北部の現地調査を残していた。今回、先行してラオス南部の現地調査を行っていたことから、バッタンバン州を中心とするカンボジア北部地域を中心的フィールドとすることにした。しかしながら、すでに多くの村寨において、土器製作が停止された状態にあった。その後、国境を接するラオス南部地域の現地調査を再開し、サバナケット県、カムワン県のラオス中部地域まで現地調査を展開することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2012年度、マレーシア半島部の土器製作の未調査分を補足したことで、外務省から危険情報が発出されているタイ深南部を除いて、一旦、マレー半島の現地調査を終結することができた。これによって、東南アジア大陸部沿岸地域及び東南アジア島嶼部との比較研究の基盤が出来上がった。 また、2012年度の中心的フィールドをカンボジアと位置付けていたものの、バッタンバン州を中心とする北部地域における伝統的土器製作があまり残されていなかったことから、当該地域の様相が判然としない。しかしながら、ラオス南部の現地調査を先行させて、当該地域の土器製作を縦覧したことによって、カンボジア北部における土器製作の様相をある程度推測することができるようになった。今後、タイ東北部及びベトナム中部の現地調査を踏まえて、すでに失われた土器製作の手がかりを得るようにしたい。 当初計画において、2014年度、ミャンマーにおけるフィールドワークを企図していることもあり、現地調査の合間を縫って、タイ中部、タイ北部、ラオス北部、中国雲南省西部地域における土器製作を実見してきた。とりわけ、タイ中部から北部にかけてのモン、カレン、シャンの土器製作は、ミャンマー国内のこれらの民族の系譜に連なる可能性があり、ミャンマー国内の伝統的土器製作を実見するうえで、不可欠な比較研究の材料と考えられる。とくに、メーサリアンからメーホンソーンにかけての山地少数民族の土器製作に関しては、これまで調査事例がほぼ皆無であり、一部であっても、これらの様相を把握できたことの意義は非常に大きい。 2011年度と比較して、2012年度終了時の達成度は非常に高いと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の主な調査地は、ミャンマーとその隣国隣接地域を予定している。しかしながら、ミャンマーの民主化が推進されているものの、未だ、不安定な政情にあるとおり、治安等の危険要因の多く残されていると考えられている。これまでのフィールドと異なり、周到な計画を立てるとともに、その実施にあたってもできる限り慎重を期す必要があると考えている。 また、現地調査を頻繁にすることで、論文等の研究発表が滞りやすくなるが、査読の有無等にこだわらず、可能な限り速やかに、調査の内容を公表することにしたい。
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