研究分担者 |
寺村 裕史 国際日本文化研究センター, 研究部, 機関研究員 (10455230)
佐藤 洋一郎 総合地球環境学研究所, 研究部, 教授 (20145113)
酒井 英男 富山大学, 理工学研究部, 教授 (30134993)
芳賀 満 東北大学, 高等教育開発推進センター, 教授 (40218384)
小方 登 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (30160740)
|
研究概要 |
中央アジアのシルクロード都市であるウズベキスタン・サマルカンド州ダブシア遺丘(テパ)の王宮地区において,現在,考古学で使用しうる最高水準の技術を用いた発掘調査と記録を実施した。 ダブシア遺丘は,サマルカンド・アフラシアブ遺丘およびブハーラ遺丘と並ぶ代表的な大型シルクロード都市遺跡であり,残存する遺丘だけで80ヘクタール,本来は250ヘクタール以上あったと推定できるものである。ダブシア遺跡は王宮地区,貴族地区,商業地区からなり,本調査地区は遺跡の中心にあたる。 調査は,城壁・建物の壁・カマドなどの遺構や,土器・陶磁器・青銅器・鉄器・石器・ガラス器などの遺物,動物・植物遺体に地球上の座標を付与した3次元デジタルデータとして記録し,GIS(地理情報システム)上で統一的に管理・分析するシステムのもとで実施している。使用機器は,高精度GPS,トータルステーション,写真測量である。 本年度の発掘調査の最大の成果は,本遺跡ではじめてソグド時代(西暦4~7世紀頃)の明確な遺構・遺物を発見したことである。 ソグド時代の遺構の特色は,イスラム時代(西暦710年以後)に比べて,大型で堅固・丁寧なことにある。本遺跡がいつ頃大型化したかは,解明すべき問題であるが,ソグド時代が最盛期であったことがほぼ確実となった。 ソグド時代の遺物は,火を使う祭祀に伴うものが多く,時代の特色をよく示している。また土器類も後の時代に比べると精巧な作りである。GIS分析の一つの成果として,貴族・王宮地区ではヤギ・ヒツジ骨の比率が高かったのに対して,王宮地区ではウシ・ウマ・ロバ・ニワトリ骨など多様な動物資料が存在したことが分かってきた。 ソグド時代は,中央アジアのソグド人が東西交易に活躍して,シルクロード交流が最も栄えた時代であり.本調査はその多角的た解明に大きく寄与すると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
ダブシア遺跡王宮地区の発掘面の下層には,まだ遺構・遺物があり,ソグド時代以前の状況の解明が課題として残っている。 またシルクロード・ネットワークの復元は,現在中央アジアレベルで実施しているが,これをユーラシアレベルに拡大することが,大きな課題として残されている。 上記2点を達成できたら,(1)当初の計画以上に進展,と評価できるであろう。
|