研究課題/領域番号 |
23401039
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
丸山 浩明 立教大学, 文学部, 教授 (50219573)
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研究分担者 |
宮岡 邦任 三重大学, 教育学部, 教授 (70296234)
吉田 圭一郎 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (60377083)
山下 亜紀郎 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (60396794)
仁平 尊明 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60344868)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ブラジル / アマゾン / マウエス / 低投入持続型農業 / 移牧 / ヴァルゼア / テラフィルメ / 有用植物 |
研究概要 |
本研究は,ブラジル・アマゾンの代表的な日系移住地や日系農場を主な研究対象として,氾濫原(ヴァルゼア)と非浸水台地(テラフィルメ)の異質な環境資源を巧みに利用した低投入持続型農業の実態とその可能性を探ることを目的としている。 今年度は,まずGIS,GPS,ALOSデータを利用して,現地調査のためのベースマップを作製した。またそのベースマップを利用して,昨年度事例農場に選定した日系人が所有するファゼンダ・ピラーニャ(ヴァルゼアの農場)とファゼンダ・サンタ・セシリア(テラフィルメの農場)において,農場全体の土地利用図と母屋周辺の施設配置図を作製した。 これらの環境地図を利用した現地調査から,以下の諸点が明らかになった。 1.季節的に浸水するヴァルゼアの農場は,乾季のみ牛を自然放牧する牧畜専用の放牧地として利用されており、浸水する雨季には牛(120頭)を船でテラフィルメの農場へ移動させるアマゾン式の移牧が行われている。 2.一年を通じて浸水しない高台にあるテラフィルメの農場では、牛の放牧以外にも,焼畑によるガラナや自給用作物の栽培が行われている。また,母屋周辺の家庭菜園や牛の放牧地には,食用や薬用に利用されるさまざまな有用植物が栽培・管理されている。さらに,農場周辺に生息する多様な野生動物も,住民の貴重なタンパク源となっている。 3.測量機器を用いた地形測量により,両農場の詳細な地形断面図を作製した。また,ファゼンダ・サンタ・セシリアでは,高さが異なる数カ所に自記水位計を埋設して,年間7m以上に達する河川水位の大きな変動にともなう地下水の水位変動や流動系の分析・解明に着手した。今年度は,まだ水位が高い9月と最低期の11月に現地を訪れて,データの収集と水質調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は,昨年事例農場に選定した日系農場において,8~9月,10~11月の2回にわたり本格的な現地調査を実施できた。とくに10~11月の訪問により,それまでの夏休みだけの現地調査ではわからなかった,最低水位期におけるアマゾンの水文環境とそれに適応した住民の環境資源利用戦略が明らかになってきた。 また,GPSやレベルを用いた事例農場での現地調査では,植物種までも考慮に入れた詳細な土地利用図や農場施設分布図,地形断面図などの詳しい環境地図を作製できた。また,自記水位計を農場内の数カ所に埋設することで,現地調査ができない期間の地下水位の変動なども分析できるようになった。今後,さらなるデータの蓄積とその解析により,未だ十分に解明が進んでいないアマゾンの水流動系と人間生活との関係が解明できると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今後も事例農場を中心に詳細な現地調査を継続する。来年度企図する具体的な調査内容は以下のとおりである。 まず自然環境に関しては,河川水・地下水データの継続的な収集・分析により,本地域の水文環境の解析を深化させる。また,住民の生活様式に関しては,本農場の農家経営分析(とくに牧畜業の経営分析)や,食生活に関する定量的な分析を推進する。 また,本事例農場でのミクロな研究成果をより広範な地域の中で位置づけることで,事例研究の一般化を検討する。そのためにも,アマゾン各地の農牧業に関する文献や統計類の収集と分析を積極的に進める予定である。
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