研究課題/領域番号 |
23401040
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
井口 欣也 埼玉大学, 教養学部, 教授 (90283027)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アンデス / 文化人類学 / 考古学 / クントゥル・ワシ / 土器胎土分析 / 国際研究者交流 / ペルー / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
ペルー北部のクントゥル・ワシ遺跡において約6週間の現地発掘調査と研究をおこなった。調査にはペルーの考古学者ラウル・チョランも加わった。同遺跡北部に発掘区を設定して発掘調査を実施したところ、当初の計画通り、神殿の建築活動と儀礼関連活動のデータを獲得することができた。とりわけ、土器に付着したデンプン粒分析を現地ペルーの研究者に依頼しておこなったところ、数種類の作物が検出され、重要な成果を得ることができた。また、昨年度に引き続きアメリカのイサベル・ドルック博士(ウィスコンシン大学マジソン校)と、同遺跡出土の土器原材料と周辺の地質サンプルの岩石学的分析をおこなったところ、当時の資源利用と流通、工芸品製作の技術に関する重要な分析結果が得られた。この成果については、現在論文として執筆をおこなっているところである。総じて、今年度の重要な目的のひとつであった経済活動を示す具体的なデータの獲得に成功したといえる。 また、ウィーンで開催された国際アメリカニスト会議において、クントゥル・ワシ遺跡調査研究に関する発表をおこない、参加した他の研究者から貴重なコメントを得るとともに情報交換をおこなった。 国内での研究としては、現地発掘調査で得られたデータのデジタル化と分析結果の整理をおこない、クントゥル・ワシ遺跡データベースへ統合した。とくに、建築活動については過去に得られていたデータと総合することによって、神殿活動の変化に関するより詳細な変化を明らかにすることができた。 また、上述のドルック博士を日本に招へいし、これまでの土器原材料分析について、日本の研究者2名(文化人類学、岩石学)のレビューを受けた結果、研究方法と成果について一定の評価がえられた。また同時にドルック博士出席の研究会を開催して意見交換をおこなった。その結果、次年度の調査研究計画についてより具体的な見通しをえることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ペルー現地での発掘調査によって、目的としていた神殿建築活動とさまざまな経済活動に関する資料が得られたため。また、土器の原材料分析においても、現地での調査によって有効な資料を収集して、重要な分析結果を得ることができたため。また、アメリカの研究協力者の招へいによって、これまでの調査研究に関して一定の評価が得られたとともに、今後の調査研究方針により具体的な方向性がえられたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までの調査研究によって、研究計画に掲げた経済活動に関する考古学資料収集について一定の成果が得られたが、資料の量に関していえば、現状ではやや時期的に偏りがあるといえる。したがって、今後の研究を推進するための方策としては、現時点でより資料が少ない時期のデータが得られるように、発掘区域を適切に選定していく。そのために過去の発掘データをよく吟味・検討していく。 また、土器の原材料に関する調査研究についてはこれまでに重要な結果が得られたが、これをより推進するためには、遺跡周辺の地質学的情報に詳しい現地ペルーの地質学者との連携が不可欠であると判断するに至った。次年度以降の調査でこれを実現するために、現地調査に先立ってよく調整をして研究協力を推進していく。 さらに、クントゥル・ワシ遺跡は出土遺物の量が他遺跡と比べても格段に多いという特徴がある。このため、石器、骨角器などの遺物に関する基本的な整理分類には、現地や海外の研究者と協力をしながら進めていくという方策をとりたいと考えている。
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