研究課題/領域番号 |
23401047
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
石原 美奈子 南山大学, 人文学部, 准教授 (20329741)
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研究分担者 |
増田 研 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科, 准教授 (20311251)
藤本 武 富山大学, 人文学部, 准教授 (20351190)
松村 圭一郎 立教大学, 社会学部, 准教授 (40402747)
宮脇 幸生 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (60174223)
田川 玄 広島市立大学, 国際学部, 准教授 (70364106)
佐川 徹 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教 (70613579)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 宗教 / エチオピア / 少数民族 / 民族連邦制 / 公共性 / 共同体 / 開発 |
研究概要 |
平成24年度は、研究会を2回開催したほか、分担者と協力者によるエチオピアにおける現地調査が行われた。南山大学で開催した研究会においては、現地調査の報告やエチオピア国内情勢についての情報交換のほか、エチオピアの宗教に関し公刊予定の論文集について検討が行われた。 エチオピアにおける現地調査は、分担者の藤本武(富山大)が南西部の少数民族マロの調査に赴いたほか、協力者の吉田早悠里(日本学術振興会・特別研究員)が南西部のカファおよびジンマ県で、さらに同じく協力者の垣見窓佳(名古屋大・院生)が中部の東ショワ県で実施した。藤本は、マロ社会にみられる呪術・妖術、および近年活発に宣教活動を展開しているプロテスタント系教会の活動について調査を行った。吉田はキリスト教徒のカファが主としてすむカファ県とムスリム・オロモが主としてすむジンマ県の境界域において調査を行い、カファ社会のなかの被差別民マンジョがイスラームに改宗する傾向があることに関する興味深い事実を発見した。また垣見は東ショワ県においてオロモの文化復興が起きていることに着目し、その渦中にいる男性霊媒師の活動と影響力を主たる対象として現地調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エチオピアが民族連邦制を導入してから20年がたち、これまで政治的に顧みられることのなかった少数民族の権利が一定程度認められるなど評価すべき点がみられる一方、長期政権特有の強権的傾向が強まっており、インフレによる物価上昇もあって国民の不満は高まっている。そうした中で国民は宗教というチャンネルを通して問題解決をはかったり、生活向上や幸福の追求をめざしたりすることが増えている。 平成23・24年度において、宗教をキーワードにして、エチオピア各地で現地調査を実施したり、情報交換を実施してきたが、昨今ますます多種多様な宗教共同体が形成されており、人々の多様なニーズに対応していることがわかってきた。人々が宗教共同体に求めるニーズとは、個人の病治しや精神的な悩みの解決にとどまらず、教育や就業機会、食糧援助、紛争解決などに及ぶ。だが、宗教への依存度が高まるにしたがい、異なる宗教もしくは宗教的立場や傾向をもつ人々同士が衝突する事件が多発している。 本研究は、宗教を切り口として現代エチオピアの情勢分析を行うことを目的としているので、こうしたローカルな現状に関する資料や報告が蓄積されてきている点において、研究が「おおむね順調に進展している」と評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は最終年度なので、一方で現地調査も進めながら、他方で出版物の公刊に向けて前進したい。 エチオピアの宗教について包括的に検討した論文集は、国内はもちろんのこと、海外においても珍しく、その価値は高い。すでに論文集の原稿は大方集まっており、研究会で何度も練り直しを行い、代表者を編著者とし、分担者・協力者を著者とする論文集は完成に近づいている。ただ平成24年に現政権を率いてきたメレス首相が死去した後、国内情勢の変化と宗教への影響が予測できない状況が続いており、引き続き、現状分析のための情報収集と現地調査を行う必要がある。
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