本研究は、現EPRDF政権下のエチオピアにおける「宗教復興」現象を、さまざまな民族・地域の現地調査をもとに検証するものである。3年間の本研究の成果は『せめぎあう宗教と国家:エチオピア 神々の相克と共生』(風響社)として刊行された。平成25年度に関しては、まず石原(代表者)が、2回にわたりオロミア州ジンマ県で調査を実施した。ジンマ県のムスリム・オロモ社会はティジャーニーヤとよばれるスーフィー教団(イスラーム神秘主義教団)の影響力が大きいが、本年度の調査においては、ティジャーニーヤの組織や活動、およびジンマ県でティジャーニーヤが中心的役割を演じている「スーフィーヤ」の活動について調査を行った。また名古屋大学大学院生垣見窓佳(研究協力者)は、オロミア州東ショワ県内で著名なオロモの霊媒師のもとで調査を行い、オロモ文化の復興運動の中にそれを位置づけた修士論文を完成させた。さらに日本学術振興会特別研究員吉田早悠里(研究協力者)は、オロミア州ジンマ県ゲラ郡にあるオロモ集落に暮らすマンジョが、被差別民として扱われるカファ社会から、ムスリム・オロモの間に移り住みイスラームに改宗することで差別を克服しようとしている状況について調査した。そして一橋大学大学院生松波康男(研究協力者)は、オロミア州東ショワ郡ボセト郡に赴き、霊媒師のもとに集まるキリスト教徒のオロモ支持者たちが吐露する悩みに着目して調査を行った。藤本武(分担者)は、南部諸民族州のマロ社会において根強く存在する呪術信仰とそれを否定しながら拡がりをみせているプロテスタント諸派について成果発表している。
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