本研究は,トリニダッド・トバゴ(以下,トリニダッド)および南フロリダの南アジア系移民及びディアスポラが,どのように宗教「伝統」を再構築しているか,またその再構築された宗教が彼らの社会関係資本形成にどのような影響を及ぼしているかを参与観察と聞取り,古文書調査を通して,通時的・教示的に明らかにすることができた。トリニダッドでは19世紀から続くヒンドゥー教徒とカトリック教徒による同一マリア像の共/分有信仰について,先行研究では見落とされてきた複雑な集団間関係を明らかにした。また南フロリダでの調査は,北米における南アジア系移民と宗教に関する既存の研究に批判的な比較事例を提供した。
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