研究課題/領域番号 |
23401049
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
西原 明史 安田女子大学, 家政学部, 准教授 (60274411)
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研究分担者 |
金 俊華 近畿大学九州短期大学, その他部局等, 教授 (30284459)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ウイグル族の民族意識 / ウイグル族独自のイスラーム / 参与観察 / バイリンガルクラス / 内地留学制度 / 親密圏 / 哈密地区非物質文化遺産保護センター / 国際情報交流 |
研究概要 |
研究代表者は、申請テーマである「ウイグル族の民族意識とイスラーム信仰の関係」を明らかにするために、24年8月中旬及び3月中旬の2度にわたり、新疆ウイグル自治区哈密地区において計3週間の現地調査を実施した。 具体的には、哈密地区非物質文化遺産研究センター所長サマット・アスラ氏、「哈密新聞社」記者のアプリズ氏、教育委員会の馬軍氏ら現地を代表する文化人から直接、宗教・文化・社会・教育に関する最新の情報を収集すると共に、彼らによるコーディネートの下、哈密市内・郊外において宗教関係者や各階層・職種・年代のウイグル族の方々にインタビューを実施し、ウイグル族におけるイスラームの特性や社会的機能、また一般のウイグル族における民族意識や国民意識、生活様式や人生観などについての資料を数多く収集することに成功した。またローズ節(断食明けの祭り)の時期に出くわし、その儀式を参与観察している。 研究分担者の方は、8月はビザの取得に支障が生じたため十分な調査ができなかったものの、3月には代表者に同行して哈密で調査を実施し、特に教育委員会や学校関係者への聞き取りを行った。そして「双語班(漢語とウイグル語のバイリンガルクラス)や「高中内地班(内地留学クラス)」など新疆独自の教育制度についての資料を得た。 また、上記協力者によって手配された翻訳の専門家による漢訳のウイグル語資料や文献を入手している。 研究代表者は、以上の取材や文献によって得た知見や資料に、23年度の成果も加えて、中間報告書や大学紀要・学会誌などに計3本の論文を発表した。主な内容は、①ウイグル族独自のイスラームの発見について、 ②親族や地域を中心としたウイグル族の親密圏の存在について、③著名な宗教関係者の人生史から見たウイグル族の宗教観について、である。これらの論考を通して、まずはウイグル族のイスラームについて理解を更に深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新疆の民族問題に関する政治情勢は相変わらず緊迫しており、それが調査活動の大きな支障となるのではと懸念していたが、哈密とウルムチにて、大学や研究機関の研究者はもちろん行政関係者にも現地取材についての理解を得ることができた。従って、イスラームという中国政府にとって政治的に大変敏感な問題をテーマにしているにもかかわらず、申請者が希望する取材対象や地域をある程度自由に取材することができた。また、ウイグル語で書かれた内部資料を漢語へ翻訳するためのグループも組織してもらえ、翻訳作業が進んでいる。 こういった調査環境の下、23年度、24年度は計4回にわたって、十分な調査を実施することができ、ウイグル族の宗教・社会・文化について数多くの資料を収集することができた。またその資料を基に、24年度は、ウイグル族の社会や宗教に関する3本の論文を発表し、本申請テーマの目的達成に向けて一定の成果を出すと共に、今後の調査研究に向けての論点を明らかにすることもできた。 現時点での論考を簡単に紹介すると以下の通りである。ウイグル族は中国という宗教について必ずしも無制限な自由を保障しない国でムスリムであり続けるために、その教えを柔軟に修正し、独自のイスラームを創りだしている。またウイグル族内部に親族中心の親密圏を作りあげることで、国家と対立することを避けながら、民族意識の涵養と民族的な絆の保持に成功している。こういった部分が中国における多民族社会構築や「民族共和」という名の中国独自の「民主化」実現のためのヒントになりうるのではないかという仮説を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の調査に向けて少し気になる点が発生している。新疆の民族関係は相変わらず緊張している上に、中国国内の政治情勢が不安定化していること、そして恐らく日中関係の悪化も関係していると思われるが、現地公安関係者による我々の調査活動への干渉が、25年3月の調査の際には極度に厳しくなった。これまでも一定の監視はあったのだが、その比ではなく、今後の調査活動についてかなりの再考を迫られるものであった。民族関係が比較的安定している哈密ですらこの状況なので、それが緊張している新疆南部ではより一層調査が困難であることが予想される。 しかしいずれにせよ調査が容易でないことは最初から想定していたので、現地の調査協力者と一層緊密に連絡を取り、現地の情勢を把握しながら今後の調査計画を立てていくつもりである。
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