研究課題/領域番号 |
23402010
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 長崎国際大学 |
研究代表者 |
細田 亜津子 長崎国際大学, 人間社会学部, 教授 (50331046)
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研究分担者 |
柳原 透 拓殖大学, 国際学部, 教授 (00230269)
後藤 治 工学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50317343)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 紛争 / 文化変容 / 住環境 / 経済構造 / 政策提言 |
研究概要 |
本研究は、紛争(一般には外部要因による被災)後に経済活動、社会関係、伝統文化がどのように変化するか、その中で人々がどのように影響をうけ、適応するのかという2点についてインドネシア共和国南スラウェシ州トラジャ族を対象として詳細な調査・分析を行い、実証研究としての独自の貢献をなす。調査・分析をふまえ、普遍的な概念規定、分析枠組みを提示し、理論研究としても独自の貢献をなす。新居住地での文化・住環境の変容に人々がどう適応していけるか、また新居住地での生活基盤を支えるための経済構造分析と生存についての経済モデルを提示する。これに基づき実際上の対応方針について関係する政府機関・国際援助機関・民間団体に提言し、政策研究としても独自の貢献をなすことを目的としている。 24年度は23年度の調査研究と分析をふまえ、23年度に調査できなかった新居住地の調査を加えた。中央スラウェシ州ポソ県、テンテナ郡での調査を実施した。特に、23年度調査の中心であったマヨア村のRTワトマエタと隣に位置するRTサルマテの集落を同時に調査することができた。調査はUKIトラジャ大学の教員と学生の協力で行うことができた。24年度はイスラム教徒が住む集落の調査をしたことが実績として大きいものである。イスラム教徒も同じような紛争後の経験があり、キリスト教徒とイスラム教徒が隣り合わせの集落の調査が実現できた。双方とも情報交換を行っており、小学校への通学や行事での相互扶助も確認することができた。 一方、当時紛争から逃れた人々の避難所であったテンテナ空港が現在は大学として新しい出発をしており、この関係者、および大学での交流が実現できた。テンテナ大学のコンセプトはPeaceとし、紛争の回避を教育の将来に託している点は世界の紛争を考える場合の大きなヒントとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度予定していた調査が実施できたことおよび隣集落であるイスラム教徒の集落を調査できたことが成果である。調査に関してはUKI(Universitas Kristen Indonesia)トラジャ大学の教員および学生の協力を得て共同で調査できたことも大きい成果である。 調査では村長、集落長などあらたな人々との協力が得られたことも大きく、次年度の調査のとりまとめができる体制をつくることができた。この点は予想以上の成果としてあげることができる。 紛争後に創設されたテンテナ大学との交流および交渉ができ、テンテナ大学のコンセプトである平和の構築での共同研究および提言が可能となった。中央スラウェシ州に創設された大学の教育方針のなかで紛争後の社会構築を新時代の学生をとおして実施できることは様々な紛争地での新しい社会・文化・経済のそれぞれの分野での先行研究となる可能性がでてきた。 以上のように本研究の調査において調査協力者および大学との協力ができたことは大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は23年度と24年度の調査成果をふまえ、中央スラウェシでの国際会議を開催して、調査結果、紛争後の社会・文化・経済の変化と人々の生活および将来の社会・文化・経済構築の方法論を討議していく予定である。 この会議での討議および成果をふまえて各分担者の研究と分析を進めたうえで、最終的に「紛争後の経済・社会・文化の変容と人々の適応ートラジャ族についての学際的研究」のとりまとめを行う。 このとりまとめを広く公開し、研究者および次世代の教育にいかしてもらうよう計画している。 また、調査・研究・分析の成果は総合的にとりまとめ政策提言、および政府機関・国際援助機関、民間団体に提言ができるようにする計画である。
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