研究概要 |
本研究の目的は、女性運動の影響力と女性の政治的代表性の向上をめぐる国際比較により、参加民主主義と代表制民主主義とが調和して機能し、民主主義がより深化することを、実証的に明らかにする点にある。研究は、調査のフレームとなる理論的モデルの構築と、そのモデルに基づく実証研究との2段構成となっているが、理論と実証は分かちがたく結びついており、両者の交差から研究を推進することを目指している。 本年度は、ワークショップ、学会報告等への参加をとおして、市民社会と民主主義的政治制度との連結点を明らかにするモデルの開発に取り組んだ。まず、2011年5月13日から2011年5月14日まで、デンマークのオーフス大学(Aarhus University)で開催された「International Workshop on Deliberative Democracy in Europe and North America:Theory,Experiences and Historical Perspectives)」に参加し、「Democracy,Civil Society and the State:Reframing from Gender Perspective)というテーマで報告した。また、6月26日から7月8日までの2週間、ロンドン大学・バークベックカレッジ(Birkbeck College,University of London)主催のCritical Theoryのセミナーに参加した。セミナーでは、Slavoj Zizek、Drucilla Cornell、Boaventura de Sousa Santos、Etienne Balibarといった著名な批判理論家のみなならず、各国から集まった研究者と市民社会について議論し、本研究の中心となる理論構築への足掛かりを得ることができた。さらに、11月17日から19日に米国フィラデルフィアで開催されたNortheastern Political Science Associationで、成果の一部を報告した(報告演題:Rethinking Democracy from Feminist Critical Perspectives:Representation,Participation and Everyday Life)。 以上により、本研究の理論モデル構想の上で、(1)社会運動を経由する直接民主主義と代表制民主主義との交差、(2)比較不能な価値をもつ社会集団間における抑圧と被抑圧の関係とその止揚、(3)解放、転移、市民性)から読み解く市民社会と民主的政治制度の解読の3点が重要であることが、明らかになった。
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