研究課題/領域番号 |
23402019
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
小川 有美 立教大学, 法学部, 教授 (70241932)
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研究分担者 |
松尾 秀哉 聖学院大学, 政治経済学部, 准教授 (50453452)
若松 邦弘 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90302835)
仙石 学 西南学院大学, 法学部, 教授 (30289508)
中田 晋自 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (60363909)
臼井 陽一郎 新潟国際情報大学, 情報文化学部, 教授 (90267451)
伊藤 武 専修大学, 法学部, 准教授 (70302784)
野田 昌吾 大阪市立大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50275236)
一ノ瀬 佳也 立教大学, 法学部, 助教 (20422272)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | EU / マルチレベル・ガバナンス / 民主主義 / ユーロ危機 |
研究概要 |
本年度の研究実績として、前年度から行われているMLGに関するアンケート調査形式を確定し、10月より調査を実施した。その結果約60名の政治研究者にアンケートを依頼し、約48%の回答を得ることができた。 本研究の研究代表者および各研究分担者は、海外出張を通じてアンケートの予備調査とともに、アンケート調査を補う現地聞き取り・資料調査、専門家との情報交換、ならびに一部成果発表を行った。研究代表者である小川はIPSA(世界政治学会)22回世界大会(スペイン・マドリード)において本研究の成果の一部として国際学会報告を行った。松尾はヴァンオーベルべケ教授(ルーヴァン大学)からアンケート項目についてのアドヴァイスを受けたほか、欧州のEU研究者ネットワークであるTEPSA(ベルギー・ブリュッセル)を訪問し、研究員であるローラ教授からアンケート調査対象について助言を受けた。若松はイギリス(ロンドン・中部・南西部)を訪問し、ガバナンスと政治の多層化の地域間差異に関する資料を収集した(11月)。伊藤は2月中旬から下旬にかけて、イタリア(フィレンツェおよびローマ)において、マルチレベルな政党組織間関係と選挙運動との関連性についての実体調査を行った。また3月中旬にはシチーリア州にてカターニア大学関係者と面談し、ヨーロッパ、ナショナル、州レベルの政党政治・行政との関係についてヒアリングを行った。臼井はジェネーブ大学のバルジガー教授をリーダーとしドイツ・スウェーデン、韓国などから研究者が集う国際ワークショップ地域環境ガバナンス(地球総合研究所、RIHN主催、京都で開催))にファシリテーターとして参加し、マルチレベル化するヨーロッパの地域環境ガバナンスを主題に議論を交わし、最新の研究動向に関するヒアリングを実施した。一ノ瀬はアンケートの依頼対象者の絞り込みとアンケートの依頼を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、リスボン条約の合意後、未曽有の金融・財政危機に陥ったEUにおいて、マルチレベル・ガバナンス(MLG)化は強化されているか、それとも機能不全が表われているか、さらにMLG化とともに各国・各地域の民主主義の構造と正統性・実効性はどのように変容しているかを有識者(政治学の学術研究者)へのアンケート調査を通じて分析、検討するものである。 24年度は、アンケート案を引き続き議論しながら、夏季に各担当者がそれぞれの担当地域にアンケートの依頼や状況調査のため現地調査を行ったうえで推敲し、10月に調査を実施することができた。実施に当たっては、改めて分担者と合わせて議論し、63名の有識者を対象に絞って依頼し、アンケートとWEBをリンクさせて回収を行った(約48%の回収率)。 さらにこの回答にもとづいて25年2月に立教大学にて中間報告会を行った。その結果、EU加盟諸国の有識者の全般的傾向として、「EU諸国・地域間の経済的格差が拡大している」、それにもかかわらず「EUは進展(集権化)していく」と多くが認識しているという、きわめて興味深い知見を得ることができた。このことは、EUの民主的構造の変容について、有識者の中で決して単純ではない認知構造が生じていることをうかがわせるものといえる。 ただし、実際に回答が得られた回答者の出身国・地域には偏りがみられるため、3月一杯までアンケート回収期間を延長して、より幅広い範囲の研究者から回答を得るよう努めた。この第一次アンケート結果についての分析と総括は、25年度2月の研究会議に続き、4月末に研究会議にて討議する。このアンケート調査の中間結果はメールとHPにて回答者にフィードバックし、今後の海外研究者との研究協力、次年度の第二次アンケートならびに最終総括、などに活かしていくことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はアンケート調査を拡大して引き続き分析を重ねるとともに、3か年の研究の総括として、国際比較と一般化のための理論枠組と比較分析を構築し、成果として発表する。なお研究代表者、分担者、現地研究協力者による研究計画の再検討の結果、同じ回答者へのアンケートを繰り返すデルファイ式調査では十分なデータを得られないとの中間評価に達したため、次年度のアンケート調査の対象を政策実務・行政的な専門家に拡大して、新たなデータを得ることとする。次年度の具体的な予定は以下の通りである。 1)通貨・財政危機の影響をもっとも強く受けた南欧諸国の研究者について補充した追加アンケート調査を実施し、その調査結果を検討する研究会を年度初に新潟で開催する。 2)政策実務・行政的な専門家に対象を拡大した第二次アンケート調査を実施する。 3)得られたアンケート結果の中間的な分析とともに、アンケート調査を補うコンテクスト的な分析を進めるために、ヨーロッパへの出張ならびに研究者の招聘により、EU・各国の政治・行政専門家と交流して、情報収集と専門的意見交換を行う。具体的には研究協力者ヴァンオーヴェルベケ教授(ルーヴァン大学)、ニール・コリン教授(コーク大学)およびアンケート回答者の各国研究者、その他EU関係機関専門家との研究交流、意見交換を行う。 3)ベルギーにおいて、Japan-EU Conference(11月予定)もしくはルーヴァン大学が開催する学術会議においてパネル・セッションを企画し、中間成果を発表する。 4)総括した結果をもって、成果をまとめる全体総括のための公開の研究会議を開催する。また日本政治学会ないし日本比較政治学会、日本EU学会での自由企画への応募を行う。以上のようにして得られた研究成果をまとめあげて、研究代表者の小川を中心として最終報告書を作成する。
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