研究課題/領域番号 |
23402027
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
土門 晃二 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (00264995)
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研究分担者 |
河島 伸子 同志社大学, 経済学部, 教授 (20319461)
馬奈木 俊介 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (70372456)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | 知的財産権 / 法と経済学 |
研究概要 |
平成24年度は、国内研究分担者二名と海外研究協力者三名によって、現地調査をメインに研究が行われた。前年度の現地調査(中国)を踏まえ、東南アジア諸国での調査を実施した。また、コンファレンスを開催し、現地専門家および海外からの研究者を交え議論を行った。 現地調査の詳細は、以下の通りである。個別の調査として、タイおよびフィリピンにおける工業部品(バイク部品)の模造品の市場調査を実施し、小売店でのヒヤリングによって情報収集を行った。また、グループ調査として、ベトナムとカンボジアにおける知的財産権侵害全般について現地調査を実施した。特に、ブランド品、バイク部品、医薬品の模造品(商標権・意匠権侵害)の市場調査を中心に行われた。 現地調査を実施する中で、ベトナム(ホーチミン市:ベトナム国立大学)において、コンファレンスを開催した。我々も含め、現地専門家(弁護士、ジャーナリスト、知的財産権取締り政府機関職員、ビジネスマン、大学教員)およびジェトロ・タイ知的財産本部、海外研究者が発表を行い、一般参加者も交えた活発な議論が行われた。その成果として、現地の出版社からコンファレンスの原稿をもとにした本(英文)を出版し、別冊としてコンファレンスでの質疑応答をまとめたものも作成した。 広報の一環として、このコンファレンスの内容は、複数の現地の新聞に取り上げられ、また現地調査の一部も新聞に掲載された。現地の企業自身が知的財産権侵害の深刻な被害にあっているというコンファレンスでの報告がある中、このマスメディアを通した広報が知的財産権保護の重要性を現地一般市民に知らせる役割を担った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目標は、ほぼ達成できた。現地調査および意見交換は順調に運び、納得のいく成果も書籍や記事によって公表することができた。現在、公表した本(英文)をアマゾン(Kinlde)で出版することを考えている。そのことによって、多くの読者に我々の成果を知ってもらうことが可能になる。 また現地調査により、コピー商品による商標権・意匠権侵害から生じる単なる権利者の利益減少以外にも、使用に危険性の生じる薬や酒類、食品なのど健康被害の問題が深刻であることが判明した。工業製品を主に調査を行ってきたが、地道な現地調査によって知的財産権の問題点を探ることができた。 さらに、コンファレンスによって途上国の研究者のネットワークを広げることもできた。特に、インドのデリー大学の研究者との交流を通して、インドでの現地調査の拠点を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象地域をインド・ミャンマー・カンボジアなどの低開発国に拡張し、従来の研究体制で現地調査を継続していく。これらの地域では、中進国やタイ・インドネシア・マレーシアといった所得上位の発展途上国とは違った知的財産権保護が求められている。また、対象品目も医薬品などに拡張する予定である。対象地域・品目にあった海外協力者は、その都度適任者を加えていく予定である。また、研究者以外に対する日本国内での研究成果公表についても適切な機会を設けることを検討する。 世界の模造品の8割を生産しているといわれている中国は、対象から外せない地域であるが、昨今の日中間の政治的軋轢によって、現地調査を実施するにはリスクが大きすぎる。この問題を解消するために、中国籍の海外研究協力者に単独の調査をお願いすることも考えている。
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