研究分担者 |
西原 誠司 鹿児島国際大学短期大学部, 情報文化学科, 教授 (00198491)
野村 俊郎 鹿児島県立短期大学, 商経学科, 教授 (00218364)
竹内 宏 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (10197270)
杉本 通百則 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (40454508)
霜田 博史 高知大学, 人文社会・教育系, 准教授 (50437703)
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研究概要 |
本年度の調査は,2期にわたって行った。 第1期は,9月に行った。本体チームは金融危機下のドイツでの雇用回復の社会的枠組を捉えることを目的に,ドイツ社会の主要組織(経済界系のドイツ経済研究所,労働組合系のドイツ経済社会研究所,左翼党本部)において,グローバル化と戦後の従来型の労働市場と労使関係の変化,金融危機の影響ついて,それぞれの見解を調査した。EUで「ひとり勝ち」の経済情勢を反映し,雇用回復が不安定雇用層の増大と同時進行したことや,協約自治制度の弱体化など,従来の「社会的市場経済」の構造転換を孕む問題点についての危機意識が弱く思えた。産業調査チームは,中小企業で雇用される労働者の処遇が生み出す社会的消費力の基盤が経済成長を支える要因であることを認識した。また,マイノリティーと雇用問題の調査チームでは,トルコ人移民受け入れ50周年の大会に参加するとともに,移民子弟が多数をしめる教育現場を訪問し,マイノリティーの社会参加と教育による貧困からの脱却の支援情況を探った。 第2期は,3月に行った。連邦移民難民局において,移民労働者の動向と政府の統合プログラムの情況をインタビューした。2011年5月までの移民受け入れモラトリアムと金融危機後の影響で,当初,EU域外からの移民は,英国,北欧に集中し、金融危機後は,ポーランドなどの経済成長が進んだ地域に吸収され,ドイツに来なかった。他方,西欧の不況産業からの移民がドイツの不況産業に流入し,雇用のミスマッチが生じている。政府の統合プログラムには毎年10万人程度が教育を受け,当局は遠からず目標が達成されるとみている。その障害となるムスリムの宗教・文化習慣等については,あまり課題視されていなかった。統合問題の権威エアランゲン大学のローエ教授も,概ね楽観的な感想で,雇用の不安定化などの情況変化がマイノリティーに与える影響等については,危機感が弱いように思われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度予定していた,ドイツの雇用情勢を形成する枠組についての主要な主張については,確認できた。その他,移民労働の現状,マイノリティーの統合政策の現状などについては,最新の情報をえることができた。その結果,グローバル化の進展にともなう今後のじょ新たな調査課題を再認識できた。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツの雇用情勢を形成している社会的構造の大枠についての確認を行ったが,この大枠の揺らぎや,大枠の構成要素となっている社会的前提が変化の中にあり,この点での調査・分析をすすめる必要がある。また,主要な社会組織が十分捉えていない,不安定雇用化,労働市場規制力の低下,移民問題,マイノリティーの労働力陶冶と社会統合の問題について,現場の労働者やマイノリティーの実状を調査・分析する必要があり,ドイツの経済的イデオロギーである「社会的市場系税」の現段階を改めて捉え直す必要がある。したがって,今後の研究では,グローバル化に伴う企業の立地政策の展開と労働市場への影響,事業所サンジカリズムの形成傾向と労働組合運動の弱体化への影響,縁辺労働市場における紅葉政策の有効性と新たな問題点などを集中して調査する予定である。
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