本研究は、(1)強固で排外的なコミュニティー凝集性を示す温州人の企業家ネットワークでは、その構造優位を支える、血縁・同郷という確固たる同一尺度に基づく強靱な信頼関係が醸成されており、そのため、(2)同コミュニティーの成員間では、この「同一尺度の信頼」によって、ネットワーク分析とコミュニティー運営の両面で、予測と制御の可能性が増すことを実証的に論じた。コミュニティー・キャピタルという新たな中範囲の概念は、旧来の社会ネットワーク分析の方法論では捨象され、その存在すら忘れられがちであった「不都合な真実」に再び光を当て、より豊かで有用な知見の導出に貢献する。
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