研究課題/領域番号 |
23402043
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
社会学
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
樋口 直人 徳島大学, 大学院・ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (00314831)
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研究分担者 |
稲葉 奈々子 茨城大学, 人文学部, 准教授 (40302335)
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キーワード | トランスナショナリズム / 日系人 / デカセギ / 帰還移民 / 外国人労働者 / 東日本大震災 |
研究概要 |
今年度は、夏期と冬期にペルーで調査する予定となっていたが、国内でも調査を進めた。具体的には70件以上の聞き取りを実施しており、そこで得られた知見は以下の通り。 (1)国内調査:関東・群馬を中心とするペルー人集住地に加えて、古くからペルーの帰還移民が居住する沖縄でも調査を実施した。ペルー人は、他の南米人より親族ネットワークの活用度が高く、なかでも沖縄とのつながりは強かった。一世の移民が少ないペルーにあって、二世三世でも沖縄の親族を頼るのは意外な結果だが、、沖縄にペルー人が多いのは移民していない親族とのつながりの強さによる。日本でも、核家族ではなく拡大家族単位で居住するパターンが多い。これはブラジルやアルゼンチンとの比較での話であり、ペルー社会の親族ネットワークの強さが関連すると思われる。以前調査したアルゼンチンは、核家族ないし個人単位の居住が優勢であり、これは日系人の特質というよりはブラジル・アルゼンチンとペルー社会の相違と考えたほうがよい。 (2)海外調査:アルゼンチン人との比較でいうと、ペルー人の方が日本ではるかに過酷な経験をしていた者の比率が高い。ブラジル人との比較において日本の労働市場で差別されていたという知見はすでに出されているが、それが家族生活の困難となってもあらわれている。国勢調査結果をブラジル人と比較すると、在日ペルー人の方が学歴も高く、子どもの進学率も高い。ペルー人の方が学歴が高いが過酷な生活状況におかれているということになるが、そのなかで子どもの進学率が相対的に高いのはなぜか、次年度以降解明すべき論点となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目の段階で70件以上インタビューをしている。これは当初予定より少ない件数であるが、これは質的調査を新たに実施したことによる。すなわち、そのうちの若年層6人に対しては、ライフヒストリー調査として何度も会い、録音した上でのインタビューも実施した。これをもとに来年度中に本を一冊刊行する予定であり、予想以上に進展があったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画は量的調査の性格を強く持っていたが、上記のライフヒストリー調査に加えて、震災の影響についても質的調査を進める。震災により帰国した家族は、日本に一部残ってペルーに戻る場合、全体で戻る場合、ペルーに戻ったものの、(全員ないし一部が)再び日本に行く場合がある。量的に把握するほどの人数に聞き取りができるわけではなく、かつ個々の経験が複雑であるため、日本とペルーを行き来する本調査の利点を生かして、両国にまたがる家族と連絡を保って質的な変化をみていく。
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