研究課題/領域番号 |
23402044
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究分野 |
社会学
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
秋庭 裕 大阪府立大学, 人間社会学部, 教授 (40222533)
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研究分担者 |
川端 亮 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00214677)
稲場 圭信 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (30362750)
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キーワード | SGI-UK / SGI-ITALIA / 日本型新宗教 / (宗教受容の)2段階仮説 / イギリス / イタリア |
研究概要 |
平成23年度は、5カ年計画の本調査研究の初年度であり、当初の計画どおりイギリスとイタリアにおいてSGIについて実査を行った。SGI-UKの会員数は約1万人であり、とくに近年の伸びが大きい。イギリスは、SGIの欧州における拠点の一つであり1961年以来と布教の歴史も長いので、本研究計画全体の中心的な位置を占めている。今年度の調査では、中核的な会員約10名にthick interviewを行ない、布教の開始から今日までの概略を知り得た。また文書資料の所在と整備状況を実査した。 SGI-UKで見出した興味深い論点の一つは、昨年度までのSGI-USAにおいて確かめられた、日本型新宗教の現地化における「2殺階仮説」がある程度以上妥当することである。それは、最初に日本型新宗教が日本文化や日本的な価値規範と混然一体になって持ち込まれ、それがある段階に達した後、日本「文化」と区別される日本「宗教」が現地に根を下ろすというプロセスとして理解される。 アメリカ合衆国においては、2段階目のプロセスの浸透は民族的なセグリゲーションを克服する契機と結びついている局面が観察されたが、イギリス社会におけるどのような社会問題や社会状況においてSGIの受容が促進されるのか、その要因やメカニズムを見出すのは次年度以降の課題である。 2月には、フィレンツェとローマにおいてSGI-ITALIAを調査した。イタリアは欧州において最多の会員数を擁しその数は6万人以上に達していて、さらになお今日大きく伸びている。欧州においてもっとも宗教熱心な国において、なぜ他文化・他地域から出発したSGIが多くの人々の心を捉えるのか、この点が非常に興味深い。今回が最初のイタリア調査であったので、その理由は十分な仮説として見出すことはできなかった。しかし、「2段階仮説」は、イタリアにおいても妥当するであろうことを予測させるデータを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の調査計画のとおりイギリス調査・イタリア調査も順調であった。ただ、イタリアはSGIの浸透においても地域的な差異が大きいことが確かめられた。これらの差異を十分にカバーすることは一度の実査では不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、当初申請の研究計画調書に記したところにしたがって実査・分析・論文作成を進めることができると考えている。しかし、例えば今夏のロンドン五輪によって、五輪終了後のしばらくの間まではロンドンに滞在することが困難になることが予想されるなど、実査の予定は社会状況などに対応し見直す必要があることが予想される。
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