研究課題/領域番号 |
23402045
|
応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
白水 繁彦 駒澤大学, 駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部, 教授 (80095942)
|
研究分担者 |
城田 愛 大分県立芸術文化短期大学, 国際文化学科, 講師 (80425389)
野入 直美 琉球大学, 法文学部, 准教授 (90264465)
李 里花 多摩美術大学, 美術学部, 講師 (50468956)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 文化的架橋者 / ディアスポラ / 文化創生 / エスニシティ / 帰米二世 / 舞踊 / 芸術療法 / 民族祭 |
研究概要 |
白水は個別テーマ「文化的架橋者の志向と活動の実態の解明」に向けて2012年8月30日から9月7日までオアフ島にてフィールドワークを実施。沖縄系、日系のキーパーソンにインタビューを行った。沖縄系と日系の関係をみた場合、沖縄系がエスニシティの覚醒に向けて求心力を強めているのに対し、双方を繋ぐ役割の人材(架橋者)が不足している点を見出した。城田は、「ハワイと沖縄の芸術療法にみる多文化共生」に関して、9月6日~9月10日の沖縄島調査では、エイサーの現代的展開等の調査。2月5日~2月12日のオアフ調査では、ハワイ大学沖縄研究所長、ウクレレ奏者・指導者、フラ実践者、琉球國祭り太鼓ハワイ支部のメンバー、自閉症児をもつ家族等に、ハワイの芸術療法等に関するインタビュー調査を実施した。李は、「コリア系の文化創生と民族間関係」に関して、2012年10月30日~11月6日(オアフ島)と2013年2月26日~3月8日(ハワイ島、オアフ島)と、2度調査を実施。戦前、戦後のコリア系の文化的架橋者等キーパーソンにインタビュー調査を行った。コリア系の文化的架橋者の志向が戦前から戦後にかけていかに変化し、その背景にはいかなる多文化社会ハワイの変容や民族間関係の変化があったのかを明らかにした。野入は2012年3月14日から19日までの日程でオアフ島に滞在し、沖縄にルーツをもつ帰米2世の調査対象者とその家族に対する研究のフィードバックと追加調査等を行い、ハワイでも知る人の少ない帰米2世の体験についてインテンシブな調査に基づく質的な深みのあるデータを収集した。研究協力者の中野は「中国系民族祭を通じた民族間関係」の研究のために、2013年1月にホノルルに滞在、中華総商会主催の民族祭「水仙祭」の参与観察等の調査を行い、民族祭とエスニック・コミュニティの組織を通じた文化交流と民族間交渉の実態を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハワイの諸エスニック集団のキーパーソンに対するインタビュー調査、その父祖の地における資料収集やインタビュー調査等、計画された調査については順調に進展している。主題の性質上、長期の参与観察、面接調査を必要とするが、これまでの10年以上にわたる人間関係の蓄積が研究調査の進展を助けていると思われる。そうした、調査地、調査対象者との良好な関係の維持のための努力のひとつが現地におけるイベントへの積極的な参加・助力であり、調査結果の現地語(英語)による公刊およびそれを用いての現地での報告会である。
|
今後の研究の推進方策 |
城田は今後、ハワイと沖縄において、民族舞踊(フラやウクレレ、エイサー)が、芸術療法として、実際にどのように用いられているのか、できるだけ多くの具体的事例を収集し、あわせて、日本(福岡を含む)と世界における芸術療法の動向についても調べ、ハワイと沖縄との比較をおこなっていく。野入は2013年8月にアルゼンチンで開催されるアジア・アフリカ学会で研究報告を行い、国際学会で成果を還元する。 李は今後、戦後の舞踊活動を中心としたコリア系の文化的架橋者の志向と民族間関係について具体的かつ実証的データを収集する。また同時にコリア系の文化創造をめぐる歴史的変化が多文化社会ハワイにおける文化創造の流れといかに連関していた/なかったのかを分析する。中野は水仙祭を中心に、これまで収集してきた中国系の民族祭に関するデータの分析を深める。そのことにより、多角的な視点から中国系の民族文化活動とそれを通じた民族間交渉および文化交流のさらなる解明を進めていく。白水は多文化社会ハワイの文化変容のダイナミズムを文化的架橋者の実践を通して明らかにする作業を続ける。さらに、全体の研究から見えてきた「民族表象の場としてのエスニック・フェスティバル」という命題を検証すべく分担者の協力を仰ぐ。
|