本研究は、英語化の半周辺に位置づけられるマレーシアにおいて創造された民間の高等教育モデルの国際的伝播、およびそれに伴って生じるナショナル社会およびグローバル社会の権力構造を考察するものである。平成26年度は、4つの課題を中心に調査、分析を進めた。 第1に、マレーシアの高等教育におけるグローバル化の推進者とナショナリストとの対立の構図を理解するため、大学における意思決定プロセスに詳しいインフォーマントに聞き取りを行った。 第2に、もうひとつのポストコロニアル社会における英語化を比較事例として考察することを通して命題の妥当性を高めるため、香港において大学の研究者およびビジネス・エリートを対象に聞き取りを行った。第3に、英語化の周辺諸国における高等教育モデルの考察を行った。具体的には、フランス語圏の中で英語プログラムを提供しているモナコ国際大学の事例の調査を行った。加えて、比較の視点から、ニース・ソフィア=アンティポリス大学のトランスナショナルなプログラムに関する聞き取りを行った。。 第4に、英語化をめぐる権力構造の理論構築を進めるために、ナショナリズム、グローバル資本主義、世界システム、グローバル英語などに関する資料収集を続行すると同時に、現地の研究者からフィードバックおよび批判的チェックを受けた。 研究成果は、単著『英語化するアジア―トランスナショナルな高等教育モデルとその波及』(名古屋大学出版会、2014年)として出版した。
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