研究課題/領域番号 |
23402051
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 吉備国際大学 |
研究代表者 |
橋本 由紀子 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (70330628)
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研究分担者 |
米良 重徳 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (90412246)
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キーワード | 社会学 / 社会開発 / 経営学 / 企業の社会的責任 |
研究概要 |
本年度の研究の目的は、仮説「社会開発と企業の持続可能性との両立を図る戦略的CSRにとって、住民とNGOの意思決定参加型が有効である」の検証を行う。具体的目標と実施概要は以下の通り。 目標1.インド国内外のCSR評価指標やガイドライン等の調査、評価項目の検証:日本や欧米のランキングや評価指標を収集するため、アジアCSRフォーラムや、アジア太平洋経営学会、ハーバード社会起業家大会に参加し、研究発表や情報交換を行った。その結果、概ねCSR評価は報告書評価や企業の自己申告型が主で、客観的評価指標によりCSR評価を行っている機関や企業はほとんどなく、CSR投資の効率性は明確になっていないことが明らかになった。また、国や地域で評価項目に大きな差があることが判明した。 2.マハラシュトラ州、プネ市の産業地区ランジャンガオンで、その地区で実施するCSRプロジェクトを選定し、キルロスカー社の使用するCSR評価指標(本研究協力者が開発を行った)を基に、地域住民100人に、地域貢献や住民の意思決定参加・プロジェクト内容に関して聞き取り調査した。その結果、地域へのコミットメントと企業イメージは高い相関関係があり、仮説は今のところ正当性が証明された。 3.成功的なプロジェクトと成果を上げていないプロジェクト奪選定した。成功の要因は、住民の意見をいかに反映するCSRを企画実施するか、企業のCSR担当者が常に住民の意見を把握し、企画に取り入れるかという点が重要項目であるという結果が得られた。これらの調査結果を公表し、NGOやインド地方自治体の連携を促進するために、プネ市で・カルベ大学院と吉備国際大学共催のCSRカンファランスを3日間開催し、120人の参加者を得・現地の新聞にも報道された。 この結果、プネ市にカルペ大学院共同研究者のイニティアティブで、NGO,教育関係者、企業CSR担当者を構成員とする「プネCSRCommnity」が設立された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標1.に関しては日本国内で主要ランキング評価アワード10種を詳細に調査した。国内のCSR評価指標はすべて、専門家からの視点のものであった。一方インドのCSRのフォーカスが地域、社会貢献、NGOや自治体、他機関との連携であり、地域住民主体の評価指標を企業ごとに作成しており、モデル化や体系化が進んでいないことが明らかになった。目標2.3.に関しては、住民に対する調査結果から、インド企業への評価が高く、CSRの成功の理由は常に住民の意見を聞き反映していることが明らかになった。4.に関しては、改善点への提案がまとまったが、NGOとの連携が十分な企業が少なく、24年度の課題として残った。概ね本研究の仮説は今のところ証明されたが、NGOとの連携がCSR成功の要因であることを証明するには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.CSR指標収集の目的はおおむね達成できたが、日本、欧米、アジアでは重要視する課題が異なり、地域特定型、産業特定型CSR評価指標が必要であることが明らかになった。したがって、住民参加により、その土地の特徴を生かしたCSR指標の開発を促進する計画である。2.現地調査に関しては、地域住民参加型指標の開発のために、一般化するにはサンプル数が少ないので、もう1地区タレガオンの住民100人に調査をし、客観的に住民の生活は向上したか、今何を望むかなどの住民の意見を集約し、企業やNGO地方自治体に提言する。そして、スウェーデンで開催される社会開発、ソーシャルワーク世界大会2012で調査結果を発表し、情報開示を行う。4のNGOと地方自治体、企業の連携調査に関しては、3の調査結果を踏まえて、住民の意見とともに企業にアプローチし、住民参加型CSR指標の導入と、企業とNGOや地方自治体との連携を提案する。
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