研究課題/領域番号 |
23402053
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
大曽根 寛 放送大学, 教養学部, 教授 (40203781)
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研究分担者 |
引馬 知子 田園調布学園大学, 人間福祉学部, 教授(Professor) (00267311)
高橋 賢司 立正大学, 法学部, 准教授(Associate Professor) (60386513)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 障害者 フランス ドイツ EU / 雇用 フランス ドイツ EU |
研究概要 |
本研究のメンバーは、フランス、ドイツ、欧州委員会等の労働と福祉に関する事例を参照にしつつ、EU(欧州連合)と各国の政策・実践の相互作用に焦点をあて、そこにおける関係から、日本への示唆を得ることに努めてきた。 2013年度、研究代表者・大曽根寛は、ドミニク・ヴェルシュ教授を招聘し、日本人との交流場面を各地で設定することとした。2013年5月に放送大学において国内の専門家との意見交換会とフランスの障害者政策に関する講演会、障害者職業総合センターでの差別禁止政策と雇用に関するセミナー「フランスにおける障害者雇用政策の動向と今後の課題」日本障害者協議会(JD)社会支援雇用研究会でのフランス事情の講演、日本障害者協議会(JD)との共催による国際セミナー「フランスにおける障害者就労の政策潮流とヨーロッパの近未来」名古屋での国際比較研究に関する「障害者雇用・国際講演会」、京都では、障害者職業センター・ハローワーク京都七条等の施設を訪問し現場の人々と直接交流し「意見交換会」など行った。これらの交流によって、日本の関係者も多くの情報や理解を得ることができたと考える。 また、分担研究者の高橋は、ドイツにおいて近年政策的重点が置かれている「支援つき雇用」(ジョブコーチ等)の制度の検討を行った。一般企業での就労への転換政策としてわが国においても注目されるべきもので、今後その実態の把握が求められる。さらに分担研究者の引馬は、ドミニク・ヴェルシュ教授の問題提起や、その他の文献および現地調査(国際会議における意見交換を含む)をもとにEUの「社会的包摂法施策」について、就労と福祉に焦点を当てて検討した。特に、包摂された就労を目指すEUの政策動向と社会的支援、その前提条件となるアクセシビリティの向上に関わる、EUおよび加盟国の状況を把握した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、「障害に関するEUの政策と各国の相互作用に関する国際比較研究―社会的包摂に向けてー」である。EUおよびEU加盟国(フランス・ドイツ・イギリス等)の障害者の就労と福祉に関する従来の先行研究をフォローしながらも、最近の制度と実態の把握をするとともに、相互の具体的な影響を実証的に明らかにし、政策の実効性とその現実的な効果を正確に把握する為、5年の年月を要すると考えた。3年目の2013年度は、研究代表者・大曽根は、フランス高等公衆衛生学院のドミニク・ヴェルシュ教授を日本に招聘し、フランスの障害者雇用・労働に関する実情とEU内の各国の国際比較に関し国内各地でおけるセミナー、意見交換会等を開催し日本の関係者との情報交換や交流の場を設けることができた。分担研究者の高橋は、2013年2月にドイツの連邦労働社会省等を訪問し、EU指令(特に差別禁止)のドイツ法への置換えの経緯や内容について調査し、ドイツにおいて近年政策的重点が置かれている「統合政策」「支援つき雇用」(ジョブコーチ等)の制度について意見を交換した。分担研究者の引馬は、EU全体の障害法政策および均等法政策に関わる社会的支援の共通の枠組みがあることを明らかにし、これらと加盟国の相互作用を検討した。また、障害者の社会的包摂を可能とするEUの新たな政策動向や議論(支援付き雇用や中間的形態を含む一般就労に向けた様々な取り組み)を把握した。研究期間の前半で実施しなければならなかったのは、EUおよびEU加盟国(フランス・ドイツ・イギリス等)における、障害者の就労と福祉に関わる近年の法施策の内容と、その具体的な影響を明らかにすることであったが、2013年度までで、その目標をかなり達成することができた。 このことを要約すると、当初の計画に従って、研究の前半期の成果が着々とあらわれているということができる
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今後の研究の推進方策 |
フランス、ドイツ、イギリス、EUにおける雇用政策の実情を日本と比較検討するために、2013年度は、この分野についての国際比較の専門家である、フランス人ドミニク・ヴエルシュ氏(高等公衆衛生学院教授)を日本に招聘(2013年5月)し、セミナー、講演会、研究会、交流会等を開催し日本の専門家、障害のある当事者との議論の場を設定した。 フランスにおいても、その人の環境に十分配慮せず個人にのみ障害の責任を負わせる可能性を避け、社会経済への「再適応」という政策モデルに替わり、バリアフリー社会、共生社会における自立生活のための政策モデルの構築が望まれている。研究の交流によって、フランスのこのような傾向は、EUおよびEU各国とフランスとの相互作用によっても生じていることが明らかになった。 今後は、各国の施策の比較検討のみならず、EU各国間の相互作用の研究、そしてEUと各国間の相互作用の研究によって、わが国のための十分な示唆を得ることとし、本プロジェクトの最終年度である2015年度の達成目標「研究報告書」の作成の準備を2014年度に行うこととする。
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