研究課題/領域番号 |
23402055
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤村 宣之 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20270861)
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研究分担者 |
寺川 志奈子 鳥取大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30249297)
渡邊 あや 熊本大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60449105)
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キーワード | 教育系心理学 / フィンランド / 思考 / 信念 / 授業 / 学童保育 / 発話分析 / 教育観 |
研究概要 |
本研究では、フィンランドの児童の思考の特質や、学習や人間関係を規定する信念、それらに影響する環境要因を,観察・面接・調査という心理学的方法を用いて明らかにする。 1.児童の思考と信念の特質の検討(観察研究):フィンランドの4つの小学校で算数科を中心とした授業場面の観察を行い、1単位時間の授業ごとに教師の発問に対する児童の発言を分析した。全般的傾向として,児童の発言は教科書に沿った定型的発問に対する短答が中心であるが,教師の発問によっては,日常的知識も用いて思考プロセスを説明する構成的説明も観察された。一方で,その説明に必ずしも多様性は求められず,他児による補足説明や質問もあまりみられなかった。児童のノートへの記述に関しては,教科書に沿う授業展開では主に思考の結果のみが記入され教師が評価していたが,一部の授業では思考プロセスも表現されていた。 2.児童間及び児童―教師間の相互作用の検討(観察研究):1で示した小学校の授業場面での児童間の相互作用を検討した結果,算数の推理ゲーム場面では,ペアとなった児童間の発話に知識の関連づけがうかがえた。教師と児童の関わりでは,教師の目標到達を重視した発問と個別支援が特徴的であった。学童保育では,ゲーム等の場面で児童間の発話が観察された。学童保育指導員は児童の活動を見守ることや,少数の児童と製作を行うことがほとんどであったが,問題が生じた際には即時に介入し児童を指導していた。 3.学童保育指導員の信念の検討(面接研究):小学校3校の学童保育指導員に面接を行った結果,児童に関する問題が生じたときに,問題を保護者,教師らと即時に共有し,関係者が連携して問題解決にあたっていることが明らかになった。このことは児童の発達を社会全体で支えるという教育観を反映していると同時に,学童保育指導員,保護者,教師の間の信頼関係の形成につながっていると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィンランドの児童に対する授業場面と学童保育の活動場面の両者における観察研究,および学童保育指導員に対する面接研究を行い,児童の思考と信念の特質,および環境要因(児童間および大人―児童間の社会的相互作用,大人のもつ信念)についての知見が得られてきているため。
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今後の研究の推進方策 |
フィンランドの児童の思考と信念の特質,およびそれに関連する環境要因について,継続的な観察研究や,教師や児童に対する面接研究と調査研究をさらに実施することを通じて,多面的かつ体系的に明らかにする。
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