研究課題/領域番号 |
23402055
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤村 宣之 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20270861)
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研究分担者 |
寺川 志奈子 鳥取大学, 学内共同利用施設等, 教授 (30249297)
渡邊 あや 熊本大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (60449105)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 教育系心理学 / フィンランド / 思考 / 信念 / 授業 / 教師 / 社会的相互作用 / 知識構成 |
研究概要 |
本研究では、フィンランドの児童の思考の特質や、学習や人間関係を規定する信念、それらに影響する環境要因を,観察・面接・調査という心理学的方法を用いて明らかにする。 1.児童の思考と信念の特質の継続的検討(観察研究):前年度に引き続き,フィンランドの3つの小学校で算数科・理科を中心とした授業場面の観察を行い、1単位時間ごとに児童の発話を分析した。日常性・テーマ性の高い発問に対しては,児童の多様な構成的説明(経験に依拠した説明,理由の説明)がみられた。個人のノートへの記述は少ないが,1枚の紙に関連する事項をつなげる記述が理科のグループ学習等で観察された。 2.児童間及び児童―教師間の相互作用の継続的検討(観察研究):前年度に引き続き,授業場面の相互作用を分析した。教師はグループやペアでの活動を適宜,指示し,児童は意見を出し合っていたが,それがクラス全体の取り組みへと発展する機会は少なかった。児童間の発話から相互に影響を及ぼしている可能性は伺えたが,知識を協同で構築するプロセスは少なく,他者は主に聞き手としての役割を果たしていた。 3.教師の信念の検討(面接研究):小学校3校の各教師に対して授業終了後に面接を行った。その結果,教師が児童の日常経験と学習内容の関わりを重視していること,20人以下のクラスで個人の特質や状況に応じて(ペアやグループの協同も含む)学習活動を柔軟に組織する一方,それらをクラス全体で集約・整理し,個人に還元する活動はほとんど意図されていないことが示唆された。また,小学校2校の教師に対して,理解と思考を重視した日本の算数授業のDVD視聴後にその授業について話し合わせるグループ面接を実施した。その結果,教師は日常性や解法の多様性のある発問にフィンランドの授業との共通性を見いだす一方,発問の系列や大人数のクラス討論の組織には差異を認識していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィンランドの児童に対する授業場面と学童保育の活動場面の両者における継続的な観察研究,および教師と学童保育指導員に対する面接研究を実施することを通じて,児童の思考と信念の特質,および環境要因(児童間および大人―児童間の社会的相互作用,大人のもつ信念)についての知見が多面的に得られてきているため。
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今後の研究の推進方策 |
フィンランドの児童の思考と信念の特質,およびそれに関連する環境要因について,継続的な観察研究や,教師や学童保育指導員に対する面接研究に加えて,さらに児童に対する調査研究などを実施することを通じて,体系的かつ客観的に明らかにする。
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