2014年度は、流動速度と末端変動に関する人工衛星データの解析を進め、10月には南パタゴニア氷原のカービング氷河と氷河前縁湖での観測を実施した。さらに2015年2月に南極半島のカービング氷河において熱水掘削を行い、流動速度と底面水圧の同時測定に成功した。これまでに得られた成果をまとめて、国内外での学会発表、論文発表を行った。 (1) 人工衛星データ解析:南パタゴニア氷原におけるカービング氷河の末端変動と流動速度マップの精緻化を行い、その成果をまとめた論文を国際誌に公表した。さらにグリーンランド北西部のカービング氷河においても同様の測定を行い、両地域の比較を行った。ペリート・モレノ氷河とアメギノ氷河の変動比較については、これまでの成果をまとめて国際誌に論文を公表した。 (2) 野外調査:2014年9月から10月にかけて、ペリート・モレノ氷河とウプサラ氷河における氷河と前縁湖の観測を実施した。本観測で春季の湖水温度・濁度の分布、氷河流動速度データを取得し、これまでに得られた夏季データとの比較を行った。また2015年1月から2月にかけて、南極半島リビングストン島ジョンソン氷河とハード氷河において熱水掘削を実施した。その結果、氷河流動と底面水圧変動の同時測定に成功した。 本プロジェクトにおいて得られた成果をまとめ、国際雪氷学会、米国地球物理学連合大会、アジア・オセアニア地球物理連合大会、日本雪氷学会などで発表を行った。また日本人研究者によるパタゴニア氷河研究が始まって30年になるのを記念して、2014年10月に北大低温研において、国内のパタゴニア氷河研究者とチリ人研究者2名を集めた国際ワークショップを開催した。本研究課題による成果を中心に、パタゴニアの氷河変動に関する口頭発表10件と議論が行われた。
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