研究課題/領域番号 |
23404006
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 邦明 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00263492)
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研究分担者 |
権田 豊 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10303116)
堤 大三 京都大学, 防災研究所, 准教授 (40372552)
藤田 正治 京都大学, 防災研究所, 教授 (60181369)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 台湾 / 小林村災害 / 台風モラコット(8号) / 深層崩壊 / 複合災害 / 河道閉塞 |
研究概要 |
台風8号による小林村災害は、深層崩壊の発生がその直接的原因であるが小林村の南側に位置する高台への避難の可否が重要な要因となっている。事実,南側高台への唯一の経路である8号橋は深層崩壊の約半日前に土石流氾濫により通行不能となっていた。そこで、なぜ8号橋が不通となるようなことが生じたのか、8号橋が架かる支流域における降雨ならびに土砂の流出特性を明らかにするため水文観測を実施した.観測は現地が急峻でアクセスが難しく、洪水と土砂流出により現地へのアクセスに一時制限を受けたり観測機器が破壊されるなど、観測機器の設置と維持管理,データの回収と困難が伴った。その一方で、観測データに基づく解析結果と8号橋流域の降雨流出土砂輸送シミュレーションからは、台風8号時の8号橋が架かる支流域からの降雨流出ならびに土砂の流出は、通常の台風の場合に較べてかなり大きくはあるものの、8号橋地点で土石流氾濫を生じるほどではなかった可能性が示唆された。このことは、計算の初期条件、すなわち台風8号による降雨流出直前の河道の状況がかなり異なっていた、すなわち既に大きな土砂流出を経験し河床が上昇していた可能性を示唆するものである. 一方、深層崩壊のメカニズムに関する理論的考察を進め、深層崩壊発生の力学的条件を明らかにした。特に,深層崩壊の発生後,土塊がなぜ大きな加速度を受けたかを明らかした.それによると、崩壊土塊に重力による加速度をもたらすような崩壊域全体におよぶ間隙水圧の時間的に不連続な、急激な上昇が必要で、加えて、この程度により土塊が得る加速度が決まり崩壊後の運動特性が決まることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観測機器の破壊と観測サイトへのアクセスに制限が生じ,一時的に観測に支障が生じた。観測に直接依存しない深層崩壊のメカニズムに関する理論的考察や8号橋の流域モデルなどについては計画通り進んでおり、観測についても、機器を再設置し、維持管理体制を強化し、おおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
8号橋の流域における水文観測を続けるとともに、観測データをもとに台風8号による降雨流出、土砂流出過程を明らかにし小林村災害に結びつく現象を評価し、深層崩壊の発生とあわせて災害の複合性を評価する災害シナリオについて検討、災害の複合性の評価と対策の考え方について検討を進める.
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