研究課題/領域番号 |
23404010
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤井 克紀 京都大学, 経営学研究科, 教授 (10595797)
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研究分担者 |
大西 正光 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10402968)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 建設マネジメント / 国際プロジェクト / ケース・メソッド |
研究概要 |
国際建設プジェクトマネジメントを主たる題材とするケース教材ならびにティーチングノートを本研究期間中に10件作成し、実際の授業等で活用することで、同分野の人材育成や教育上の課題について考察することを目的にしている。これまで、現地調査、当事者への複数回のヒアリング、一部授業での活用等を踏まえ、以下のようなケース教材の作成に着手してきた。①エジプト:ザファラーナ風力発電事業(CDM交渉)②ケニア:園芸作物施設事業(プロジェクト効果発現のための課題)③ケニア:ソンドゥ・ミリウ水力発電所(アドボカシー環境NGOへの対応)④ケニア:ナクル市環境問題(都市活動と自然環境との共生)⑤台湾:高雄市BOT事業(契約金未払い問題)⑥タイ:PPPプロジェクト(政府のリスク対応)⑦日本:東北復興支援NPO(組織マネジメント)⑧フィリピン:アジアでの起業(企業立ち上げ編/企業経営編)⑨中東:パレスチナの水問題(国際河川をめぐる攻防)⑩ベトナム:アセットマネジメント(道路アセットマネジメント導入)。このうち、①②③④⑤⑧については既に授業で活用し、実際の学生の議論を踏まえながら教材の改善を行ってきた。他についても、ケース教材の8割方は完成しており、最終的なとりまとめを随時行っているところである。 ビジネススクールの学生にとって、理論編を踏まえたケースメソッドの授業は高く評価する向きがあり、従来議論を苦手としてきた日本人学生の刺激になっていることは間違いない。しかしながら、議論を如何にコントロールするかは毎回異なる技法が求められ、しかもティーチングノートを教授間で共有し同質の講義を提供することは非常に難しい。 なお、本研究との関係で、当大学院でのケース教材作成、管理をシステム化するとともに、FD活動も並行して実施してきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、10件のケース教材の作成し。教育上の課題を整理することを目標としているが、既に6本は完成、残りの4本についても8割方進んでいると認識している。また、授業での活用を踏まえたケース内容の改善も継続的に実施しており、それに合わせてティーチングノートのレビューを行ってきた。以上から、おおむね順調な進捗と考えている。 また、大学院教員間においてケース勉強会を開催し、組織的にケース教材の蓄積がなされるようシステム構築が行われ、他の研究分野のケース教材の活動にも関与できたことは当初計画になかった成果であると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で予定していた10件のケース教材作成については、ほぼ目途がつきつつあるが、今後必要に応じて追加的な現地調査やヒアリングを通じ、また授業での活用実績を踏まえながら改善を図りたいと考えている。とりわけ研究実績の概要に示した⑥⑦⑩については9月までに授業で使用可能なレベルに仕上げる方針である。 教育上の観点から、授業中の議論を如何にコントロールするかは非常に悩ましい課題であり、経験の蓄積も必要である。また、ケースの当事者から直接話が聞けるような授業もアレンジできれば、さらに学生の関心も高まるものと思われる。FD活動も含め、教員間の意識の共有化を強化したいと考える。 さらに、ケース教材の公開については、ケースの対象となる企業、個人から了承を得るのが非常に難しいという問題があることを指摘しておきたい。ケースになる事業は、何らかの問題があり、それを解決していくプロセスを疑似体験しながら学ぶことが重要であるが、些細な問題であってもそれが公にされることを良しとしない企業、個人が多い。よって、事業名や企業名を変更してケースを作成せざるを得ず、されが臨場感の欠如にもなりやすいという結果がある。その点、企業、個人側にもケース教材への理解を深めてもらう必要があり、協力者に対する対話を継続していきたい。
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