研究概要 |
本研究の目的は、海外の大規模な廃棄物最終処分場をターゲットとし、温室効果ガスの主要な発生源である廃棄物最終処分場からのメタン放出量を高精度に推定するため、現地調査データおよび衛星リモートセンシングを利用した手法を開発することである。さらに、本研究で開発した衛星によるメタン放出量推定手法の成果を発信するとともに、世界各国の最終処分場を対象とした衛星監視ネットワークのシステムづくりのための知見をとりまとめる。 本年度は,廃棄物埋立地の表層付近における覆土の通気性に関する面的情報を得るため,衛星リモートセンシングを利用した手法の適用可能性について検討した.廃棄物埋立地表層の通気性を面的に評価することができれば,その情報を,埋立廃棄物層内部から大気への埋立ガスの放出等を記述した数値モデルへの境界条件の入力値等として活用することが可能となり,埋立地の安定化やガスフラックス等の面的な推定を行うための重要なデータとして,衛星リモートセンシングから得た面的情報を利用できる.衛星リモートセンシングにより覆土の通気性を推定するための要素として,(1)覆土の含水率,(2)覆土の通気係数,(3)植生の3つの指標に着目した.(1)および(2)については,人工衛星の代用としてスペクトルメータを用いて廃棄物処分場における覆土の分光反射スペクトルを測定するとともに,現地の覆土をサンプリングし含水率試験,通気性試験,分光反射スペクトル測定を行いそれぞれの関係について考察した.(3)については,覆土に生育した植生がCH4の放出に及ぼす影響について検討するため,カラム実験および屋外実験により植物を介したCH4放出および影響要因について検討した.さらに,リモートセンシングにより測定可能なNDVIと,植物を介したCH4放出との関係について考察した。最後に植物を介したCH4放出モデルの構築を行った. また、インドネシアジャカルタ市の3ヵ所の最終処分場においてメタン放出量に関する調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)現地調査 現地においては、メタンフラックスの測定および関連する諸因子について、埋立終了からの年月が異なる複数の埋立区画において調査を実施する。同一の埋立区画内においても、場所によって当然メタンフラックスは異なるため、これらを考慮した調査地点を選定する。調査の項目としては、埋立廃棄物の組成、埋立方法、埋立量、区画別の埋立履歴、メタン等埋立ガスの発生状況(覆土表面からのフラックス、覆土層内および廃棄物層内のガス組成)、地表面温度、植生(密度、種数、草本層高さ等)、覆土の状態(3相、透水係数等)、覆土表面の傾斜や凹凸の度合いとする。 メタンフラックスの測定については、閉鎖式チャンバー法とレーザーメタン検出器を併用する。また、必要に応じて連続観測を実施するためのフィールドステーションを設置する。 (2)衛星リモートセンシングデータの検討 使用する衛星リモートセンシングデータについて検討する。画像としては、埋立地覆土の気相率の分布を詳細に把握するため、に本的には高分解能でかつ植生を判別できる近赤外波長域のセンサを有する衛星画像(IKONOS,Quickbird,ALOS)用い、これと土壌の含水率を把握するのに適した短波長赤外域のセンサを有する衛星画像(ASTER,LANDSAT)及び同様に土壌含水率を把握するためのマイクロ波センサを有する衛星画像(RADARSAT,ENVISAT,ALOS)等が候補となる。
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