研究課題/領域番号 |
23404017
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
島岡 隆行 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80202109)
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研究分担者 |
中山 裕文 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60325511)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 最終処分場 / メタンフラックス / リモートセンシング / モニタリング |
研究概要 |
本研究では、海外の大規模な廃棄物最終処分場をターゲットとし、温室効果ガスの主要な発生源である廃棄物最終処分場からのメタン放出量を高精度に推定するため、現地調査データおよび衛星リモートセンシングを利用した手法を開発することを目的としている。さらに、本研究で開発した衛星によるメタン放出量推定手法の成果を発信するとともに、世界各国の最終処分場を対象とした衛星監視ネットワークのシステムづくりのための知見のとりまとめを行う。メタン放出量の推定精度向上のため、現地調査データ、メタン放出モデルと衛星リモートセンシング解析を統合し、①メタン放出量と影響因子の関連性把握、②上記に関する現地観測データ、プロセスモデルと、衛星リモートセンシングデータとを統合したメタン放出量の推定手法の確立、③世界各国の最終処分場を対象とした衛星監視ネットワーク構築のためのシステムづくりを行う。 本年度は、インドネシアジャカルタ市およびマカッサル市の最終処分場において、メタンフラックスの測定および関連する諸因子について、埋立終了からの年月が異なる複数の埋立区画において調査を実施した。同一の埋立区画内においても、場所によって当然メタンフラックスは異なるため、これらを考慮した調査地点を選定した。 メタンフラックスの測定については、閉鎖式チャンバー法とレーザーメタン検出器を併用した。レーザーメタン検出器での測定は、2本のポール間にワイヤを張って検出器を移動させながら連続的に測定する手法を用いた。これにより、20m×20mの範囲における地表面から1mまでのメタンガス濃度分布を10分程度で計測する手法を構築した。さらに、メタンガス濃度とフラックスの関係式を導出した。この結果から、メタンフラックス空間分布を効率的に取得することができるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、廃棄物埋立地におけるメタンフラックスの増減に影響を及ぼす要因として、覆土の含水率、通気性、植生状況について検討した。さらに、廃棄物埋立地の表層付近における覆土の通気性に関する面的情報を得るため、衛星リモートセンシングを利用した手法の適用可能性について検討した.廃棄物埋立地表層の通気性を面的に評価することができれば、その情報を、埋立廃棄物層内部から大気への埋立ガスの放出等を記述した数値モデルへの境界条件の入力値等として活用することが可能となり、埋立地の安定化やガスフラックス等の面的な推定を行うための重要なデータとして、衛星リモートセンシングから得た面的情報を利用できる. また、平成24年度は、廃棄物埋立地におけるメタンフラックスの面的分布を現地において迅速に計測する手法を開発した。廃棄物埋立地のメタンフラックスの面的分布の実測値と、それに影響を及ぼす諸要因の面的分布の関係性を分析することで、衛星リモートセンシングによるメタンフラックス面的分布の推定手法を確立することが可能となる。 これまでのところ、研究全体の目標達成度は約50%程度と評価する。残された課題として、現地観測データ、プロセスモデルと、衛星リモートセンシングデータとを統合したメタン放出量の推定手法の確立、世界各国の最終処分場を対象とした衛星監視ネットワーク構築のためのシステムづくりがあり、これらを平成25年度に実施する必用がある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成25年度は、衛星リモートセンシングによって得られる最終処分場のの地表面データ(被覆分類、覆土含水率、植生状況、地表面温度)と、現地測定で得られたメタンフラックスデータ、さらにメタン放出モデルのリンクを検討する。衛星リモートセンシングに利用するデータとしては、埋立地覆土の気相率の分布を詳細に把握するため、基本的には高分解能でかつ植生を判別できる近赤外波長域のセンサを有する衛星画像を用い、これと土壌の含水率を把握するのに適した短波長赤外域のセンサを有する衛星画像及び同様に土壌含水率を把握するためのマイクロ波センサを有する衛星画像等が候補となる。各種の衛星画像を用いるが、衛星画像データの分解能、データハンドリングのしやすさ、画像ライブラリにおける対象埋立地の画像ストック数、取得コスト等を考慮し、最終的には使用する衛星の種類を絞る。 さらに、世界各国の最終処分場の名称、位置(緯度、経度)等をリスト化し、GISとリンクさせる。さらに、現在利用可能な人工衛星がこれらの最終処分場を含む画像を撮影する年間の回数、時期、コスト等の情報を衛星別に入手し、人工衛星による監視体制づくりのための基礎情報を整理する。
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