本研究では,温室効果ガスの主要な発生源である廃棄物最終処分場からのメタン放出量を現地調査とリモートセンシングデータを組み合わせることによって推定する手法を構築するため,日本,中国,インドネシア等の最終処分場における現地調査,モデル実験,リモートセンシング解析を実施した.メタン放出量に影響を及ぼす要因として植生に着目し,廃棄物層内で発生したメタンが植物を介して大気中に放出される現象について検討した.なお,申請時には人工衛星だいち(ALOS)のリモートセンシングデータの利用を検討していたが,平成23年5月に運用を停止したため,高解像度画像取得には現地においてバルーンを用いたリモートセンシングを実施することとした.主要な結果を以下に示す. 廃棄物層内において発生するメタン等の温室効果ガスの一部は覆土に繁茂した植物の根から吸収され,植物根内の通気組織を通って大気中へと放出さる.本研究の実験条件では植物を介したメタンの放出比率は0.6~63.3%であり,この割合には植物種,土壌の土質特性が影響した.メタンが植物根に透過し,植物体内を拡散によって大気中へ放出されると仮定したモデルを構築した. 現地調査において,メタンフラックス分布を短時間で簡易に把握するための手法として,LMDを用いたスキャン法の適用性について評価した.メタン放出量が高い場所であれば,一定精度でメタンフラックスの分布を推定可能であった. 埋立地表面温度と,メタンフラックスの間には相関があることを確認した.埋立地内部は50℃程度の温度であり,発生した埋立ガスが熱対流や拡散によって大気中に放出される際,フラックスの大きい場所が暖められて比較的高温になると考えられた. 可視域,熱赤外域のリモートセンシングデータを用いて,埋立地における覆土表面の含水率分布やメタンフラックスの分布を一定精度で推定できる可能性があることを示した.
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