研究概要 |
本研究は,地球温暖化の影響を受けるアジア諸都市の津波災害マネジメントに資するために,(1)2004年スマトラ沖津波後にスリランカ,インドネシア,タイの被災地で施された復興計画を整理し,施策と復興過程との関係を明らかにするとともに,(2)被災者に対するアンケート調査から復興施策を検証し,(3)今後海面上昇の影響を強く受ける沿岸都市の津波による都市リスク評価手法を考案することを目的としている. 平成23年度は,主に「A:2004年スマトラ沖津波被災地の復興の検証」を実施した.まず,「A1.都市の津波復興・防災計画の整理と比較」の研究として,スリランカ,インドネシア,タイでこれまでに実施されてきた復興に関する情報を収集・整理し,年表等を作成した.そして,インドネシアとタイの現地調査をし,被災から6年が経過した時点における復興過程の課題について考察した.次に「A2.建物復興曲線を用いた復興施策の評価」の研究にも着手し,都市の復興過程を客観的に記述する建物復興曲線を用いて,3カ国の比較を行った.その結果,タイランド,スリランカ,インドネシアの順に復興が早かったことが示された.ここで実施した調査と比較分析は,二年目以降に予定されているアンケート調査に活かされるものである. また2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震と津波は,本研究を実施するうえで重要な災害であることから,その被災状況と復興に関する情報も収集した.地域が津波により被災してしまった重要な要因として,住宅立地の変遷も挙げられるため,三陸における明治と昭和の大津波前後の復興状況ならびに被災後の施策と住宅立地についても分析した.その結果,沿岸部に住宅が立地してきた過程を定量的に示すことができた.さらに,東日本大震災後に各地で策定された復興計画に関する情報を収集・整理した. 以上の成果を学会等で広く発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ研究実施計画どおりに進められた.ただし,東日本大震災が発生し,それらに関連した様々な活動が発生したため,タイ,スリランカ,インドネシアを対象とした調査分析に思ったほど時間をつぎ込めなかった.その一方で,東日本大震災による被災地を対象とした分析はいろいろと進めることができた.ほぼ復興が収束しているインド洋沖津波被災地と現在リアルタイムで復興が進められている東日本大震災被災地を,相互に観察することにより,本研究がより密度高く進められている.
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