研究課題/領域番号 |
23404019
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村尾 修 筑波大学, システム情報系, 准教授 (70292753)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 2004年インド洋津波 / 都市復興 / 津波リスク / 津波避難 / 地球温暖化 / 海面上昇 / スリランカ / ベンガルデルタ |
研究概要 |
本課題は,「A:2004年スマトラ沖津波被災地の復興の検証」と「B. 都市の津波リスク評価手法の提案」の二つの柱から構成されている.平成24年度は,平成23年度に得られた調査データおよび研究成果を用いて,「A1.都市の津波復興・防災計画の整理と比較」のとりまとめ,「A2.建物復興曲線を用いた復興施策の評価」についての相関分析,そして「A3.アンケート調査による生活再建策の検証」を実施した. A1については,平成23年度に調査で得られた各国の被災から復興に関する時系列情報を視覚的な年表として表現し,整理した. これを我が国の1923年関東地震,1945年以降の震災復興,1995年兵庫県南部地震とも比較し,東日本大震災に関する復興過程とも関連させながら,考察した. A2の相関分析については, A1で整理した国ごとの施策と既に構築済みの復興曲線とを照合させ,その関連性について明らかにした. A3では,主にスリランカ被災地を対象とし,仮設住宅・恒久住宅の入居時期,原地復帰の意志や施策に対する意識調査のための事前準備を行うとともに,都市リスクを評価する手法を検討した. 以上の調査を通じて,平成25年度から本格的に実施する予定の「B1.津波建物被害関数を用いた被災地の都市リスク評価」のために利用可能なデータについても調べ,検討した.また本研究は,津波に関する避難リスクとも関連するため,国内における津波避難に関する取り組みについて情報を収集した。また今後実施していく,地球温暖化による海面上昇の影響についての状況を把握するために,ベンガル・デルタ(バングラデシュおよびインド)を調査した. そして,これらの成果を国内外の学会等にて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に予定していた内容は,平成23年度に得られた調査データおよび研究成果を用いて,「A1.都市の津波復興・防災計画の整理と比較」のとりまとめ,「A2.建物復興曲線を用いた復興施策の評価」についての相関分析,そして「A3.アンケート調査による生活再建策の検証」であった. A1については,平成23年度に調査で得られた各国の被災から復興に関する時系列情報を視覚的な年表として表現し,整理した.これを我が国の1923年関東地震,1945年以降の震災復興,1995年兵庫県南部地震とも比較し,東日本大震災に関する復興過程とも関連させながら,考察していく予定であったが,東日本大震災の復興もまだ途中であるため,情報が整理しきれなかった. A2の相関分析については, A1で整理した国ごとの施策と既に構築済みの復興曲線とを照合させ,その関連性について明らかにした.これについては,復興という現象について定量的に比較することができた. A3では,主にスリランカ被災地を対象とし,仮設住宅・恒久住宅の入居時期,原地復帰の意志や施策に対する意識調査を実施する予定であったが,現地での調整が難しく,意識調査は実施できなかった.しかしながら,今後必要な津波リスク評価手法については,重要なデータを得ることができた. 地球温暖化による海面上昇の都市への影響については,平成25年度以降に本格的に進める予定であったが,平成24年度にバングラデシュから来ている研究員が本研究室に所属していたため,前倒しして調査を実施した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,「A:2004年スマトラ沖津波被災地の復興の検証」と「B:都市の津波リスク評価手法の提案」の2つの大テーマと5の小テーマにより構成される。Aでは(A1)津波後に実施された3カ国の都市復興計画および防災計画の情報を収集し,整理するとともに,(A2)既往研究をさらに発展させ,復興曲線を用いた復興過程の比較研究により,国ごとに見られる差異と共通項についての解釈を試みる。また被災者の住宅再建も落ち着いているため,スリランカの被災者を対象としたアンケート調査を実施し,施策について検証する。研究期間の後半はBに着手し,Aで得られた知見も考慮し,(B1)スリランカを対象とした地球温暖化時代の都市の津波リスクを評価し,(B2)他のアジア諸国での利用できる評価手法を検討・提案する。 平成25年度は,昨年度および今年度も予定しているスリランカ被災地の調査に基づき,スリランカにおける被災者の立場での復興施策を検証し,課題等を明らかにする。また津波リスクの評価のためのデータ収集を行う。データは地理情報システムを用いるためにスリランカの空間情報データや衛星画像等からなり,それらを用いて津波沿岸部の脆弱性リスク,津波避難のリスクについて分析していく。 また温暖化による海面上昇の都市リスクに関する研究についても着手する。そのために既存の情報源から温暖化の都市への影響について調査し,都市リスク評価方法について検討する。そして昨年度に調査したベンガルデルタ地域の現状についても整理し,平成26年度以降の研究につなげていく。
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