本研究は、これまでの調査実績を踏まえながら、かつて中国に存在した5つの「日本租界」を対象に当時外務省の外交記録等の史料を解読した上で、租界設立同時の情報を把握し、現地の研究協力者と共同で総合調査を実施して、日本租界の都市空間の構成及びその変容を明らかにすること、そして市街地の構成、配置、建築物等を実測調査し、日本租界に関する空間情報のデータベースを作成する共に、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)による「日本租界」の再現を行うことによって、今後、日中両国における近代都市史を理論的に分析するための資料・情報を提供し、都市文化遺産としての「日本租界」の再評価を行うことを目的とする。 本年度は最終年度で、現地の研究協力者と共同で、今まで調査してきた事項の再確認と補充調査を行った。また、これまで作成した「日本租界」復元3DCGの表現精度を高めながら、計画通りに完成させた。 これまでの3年間の研究成果では、日本租界の開設経緯のみならず、当時の敷地条件や計画理念を明らかにすると共に、日本租界研究における最も基礎的な資料となり、今後我が国の都市計画史や社会史の研究の進展に寄与することができたといえる。また、日本租界は日中両国における歴史的な「産物」であり、相互理解を深めながら、日中両国の研究者が共同研究の実施及び努力によって、租界研究のみならず、今後、両国の都市文化に対する相互理解の促進に対して一助となることが期待できる。
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