研究概要 |
2013年度は、引き続き残された課題を解決するための調査を進めるとともに、まとまってきた成果を公表するための取組みを進めてきた。2013年4~6月にかけて国内外での成果発表準備を進め、7月にはコミュニティ政策学会とアメリカ/ヨーロッパ合同都市計画学会(Joint AESOP/ACSP World Congress)で、それぞれ成果報告を行った。前者の報告では、人口減少自治体で、要介護高齢者のうち重介護高齢者が施設入所している割合が高いことの要因を重回帰分析で探るもので、要介護高齢者の入所率は、人口増減率、単身高齢世帯率と正の相関性が、医療福祉従事者指数、高齢化率、高齢単身世帯率と負の相関があることが分かった(仁科、石井、保井, 2013)。後者では、従前の都市理論と、人口減少都市とりわけリバプールと北九州市での調査結果を検討し、今後は、マクロな成長戦略より市民主導のミクロな地域戦略の連携を重視すべきとする「市民革命(insurgency)」を、新たな都市計画の考え方として提示した(Mace, Taylor and Yasui, 2013)。 2013年7月には、英国で追加調査を行い、特に英国現政権で進むコミュニティ分権の流れと、人口減少地域の再生がどのようにつながっているかにつき、3つの地域でヒアリングを行った。9月以降は、国内の都市郊外の団地地域における住民の交流やその拠点整備に関するヒアリング調査を引き続き行っている。こうした成果を現在、報告書として取りまとめており、今後は公表に向けての作業を進めていく。 2014年3月には、国内外の研究協力者を集めて一般に公開したシンポジウム(約150名参加)を開催した。人口減少社会においては、大規模な都市再生を進めるのではなく、ミクロな再生の取り組みを連鎖的につなぐことの意義やその方策について確認することができた。
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