本研究は、社区に着目して、組織化された社区運営体制を持つ杭州市と、自律的な社区改善がうまれつつある上海市を対象として研究を行うものである。以下、それぞれの実態に合わせて調査・分析を行った。 杭州市では、「社区参加プロジェクトの実践を通したアクション・リサーチにより、参加の態勢と手法のあり方を明らかにする」という当初の目的のもと、春にコミュニティの実態調査を行った後、研究協力者である浙江大学との協働で、学生による歴史的なインナーシティのコミュニティの集中調査を行い、社区参加の実践プログラムの提案を行った。これらの事前調査の結果のもと、具体的にコミュニティと行政の協力を得られる場所として、杭州市の二十三坊の中に残された市場に隣接した居住ユニットを研究対象と選び、現地との連携を行った。コミュニティの積極的参加による自律的な住環境改善の方法論と、空間としての計画案を作成するべく、文献調査・コミュニティへのヒアリング調査・現地専門家との意見交換を行い、アクション・リサーチとして実際に社区居住住民と政府関係者、専門家が参加するワークショップを行った。そこで、現実としての住民の課題をすいあげ、その結果も踏まえて行政に「社区参加による自律的な社区空間マネジメント」の提案を最終成果として行った。また、この結果は浙江大学城市学院において公開発表会を行うことで、広くフィードバックした。 上海市では、継続的な実態調査として、すでに自律的な社区改善が自然発生的に起こっている地域を、対象地域を拡大して現地調査を行った。対象地域は自律的な社区改善の動きが見られる都心部の複数街区である。現地踏査、変化の実態記録、インタビュー調査を行い、空間面とコミュニティ面による創造的な自律改善の実態を明らかにした。3年間の継続的な変遷調査の結果として、地域特性と自律的変化のありかたについて分析することができた。
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