研究課題/領域番号 |
23405002
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮島 利宏 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20311631)
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研究分担者 |
渡邉 敦 東京工業大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (00378001)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 海洋生態 / 環境変動 / 炭素循環 / 大気降下物 / サンゴ礁 / 海草藻場 |
研究概要 |
1.本年度はまず4~5月に分担者(渡邉)がフィリピン東部海域の研究航海に乗船し、外洋域における溶存二酸化炭素・水安定同位体比分布等に関する基礎調査を実施した。この成果は渡邉と海外研究協力者(フィリピン大学McGlone教授)らにより25年12月の米国地球物理学連合大会で発表される予定である。 2.計画調書に記した4つの重点サイトのうち、交付申請書の実施計画に記載した3つのサイトで9月と3月に集中観測を行った。観測内容はpCO2および炭酸系パラメーター、栄養塩と溶存有機炭素の分布等にわたり、2箇所では特にサンゴ礁と海草藻場の役割の評価に着目した調査を実施、うち1箇所では溶存有機炭素の分解速度の定量評価を併せて実施した。この過程で、制限栄養素としてのリンの役割を詳細に調べる必要性が判明し、リン酸の酸素同位体比を利用した動態解析に試験的に着手した(この手法開発研究は25年度からは別の科研費による新規研究課題に発展的に吸収される)。 3.前年度から引き続き、フィリピン国内の3箇所で降雨成分の通年観測を実施している。うち2箇所では1年分の分析結果が得られたので、24年11月のRegional Workshop(フィリピン・ケソン市)にてポスター発表を行った。 4.栄養塩ストレス評価のための生物移植実験を、交付申請書に記載した2箇所において24年3月から実施し、現在も経過観察中である。 5.海洋酸性化応答評価のための屋外水槽実験設備をフィリピン大学ボリナオ臨海実験所に設置した。これは当初の研究計画にはなかったが、相手国側研究者からの提案により本研究課題に追加されたもので、実験に必要な装置類の整備は一部は23年度からの繰越金によって賄われている。24年末までに必要な機材の投入が終わり、25年3月から予備実験を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、当初計画にはなかった屋外水槽による酸性化応答実験を、相手国側研究者からの提案に基づいて24年度から組み入れた。このため他の研究項目のために用意した予算の一部を節約して、実験設備の整備に充てた。このような予定変更にもかかわらず、当初から予定していた調査研究は概ね予定通りに進んでおり、後から追加された屋外水槽実験も24年度中に準備を完了して、25年3月から本格運用に供されている。したがって全体として見ると、予定通りか予定を上回るペースで研究が進行していると認められる。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように24年度初めの段階で研究計画の一部変更(新たな項目の追加)があったが、その後の対応は適切に行われており、現在の方針で研究を着実に進めることが望ましいと考えられる。なお、新たに追加した屋外水槽実験で顕著な成果が得られた場合、25年度後半以降に自然生態系での操作実験を試みることも検討している。
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