研究分担者 |
齋藤 裕 北海道大学, 大学院・農学研究院, 教授 (20142698)
谷 宏 北海道大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (80142701)
高田 壮則 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (80206755)
辻 宣行 北海道大学, サステイナピリテイ学教育研究センター, 特任准教授 (40236881)
佐原 健 北海道大学, 大学院・農学研究院, 講師 (30241368)
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研究概要 |
本研究では,現地調査と衛星画像をもとに,リモートセンシング手法を駆使して時系列および大地域的に竹林動態を解析し,害虫発生動態,気象データをそれに重ねることによって,仮説検証を試みる。 6月末,日本の研究者が中国福建省に入って,現地の海外研究協力者と過去の害虫大発生被害の状態をもとに適切な調査地域を選定した。現地のモウソウチク林の植生変化(葉の状態の推移)が,2年周期であることから,同じ季節であってもその様相が大きく異なると予想されているからである。そのために,きめ細かなデータを採取するために,今年度に3回(のべ12名)の現地調査を実施した。 本研究では衛星画像から抽出された竹林画像と実際の竹林状態のすり合わせが不可欠である。また,衛星画像を解析する時,グランドトゥルースデータが必要である。そのため,私たちは,アメリカUnited States Geological Survey(USGS)のホームページ(http://glovis.usgs.gov/)により1989年から2009年までのLandsat TMデータ43シーン,ETM+データ75シーンをダウンロードし,解析を行った。また,土地被覆分類のための教師データ57エリア,GCP(Ground Control Point)75点,分光放射計による異なる植物の波長分布データ225個を取得した。 また,害虫発生状態を現地で確認したところ,15年前の大発生時に較べると全体としては,その被害は軽微であったが,南平の竹林で小域ながら被害が出ていることが判明,その原因は農薬多使用と推察されたが,現在でも被害甚大域が抽出できるという僥倖に恵まれた。これらをもとに衛星データの解析結果によって,被害竹林の抽出について,9月・10月の画像が最も精度が良いことを判明した。また,分光放射計で測定したデータから,異なる植物の波長分布特徴が把握でき,土地被覆分類を行う時,参考データとして使用することができることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
フリーな衛星データが入手できたため,研究費予算による影響を軽減し,計画より多年度・多時期な解析が出来た。また,現地において,タケ害虫の生物的防除の担い手であるカブリダニのバンカープラントであるススキの繁茂状況のデータを採取,さらにそこの確かにタケ害虫の天敵カブリダニの餌となるススキスゴモリハダニの発生を確認,同時にカブリダニの存在も確認することができた。これらの天敵に対するスゴモリハダニ類の対抗戦術である反撃行動(社会行動)が,スゴモリハダニの種によって異なっていることも明らかになった。今後は,こうしたシステムシミュレーションの基礎データとなる個々の事象が,モウソウチク上での害虫発生のダイナミクスにどう関わってくるのか研究を鋭意進めることになる。
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今後の研究の推進方策 |
いまのところ,研究全体の推進方策には変更を必要としていない。今後は,複数年度および観測地域の衛星データを購入する必要がある。また,過去の竹林虫害発生に関する野外の詳細な資料を収集しなければならない。その点において,現地でのデータ入手に時間がかかっている。また,データの開示状況があまり期待できない部分もあって,政府関係者の協力を取り付ける必要があると考えている。
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