研究課題/領域番号 |
23405006
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
工藤 岳 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授 (30221930)
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研究分担者 |
石井 博 富山大学, 理工学研究部, 准教授 (90463885)
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キーワード | 陸域生態系 / 送粉系 / 高山植物 / 植物生態学 / 生物多様性 / ニュージーランド / 個体群動態 / 生物間相互作用 |
研究概要 |
季節性の明瞭な中~高緯度生態系において、植物群集の季節的開花パタンは、花蜜や花粉を資源として利用する動物群集にとって重要な生態系の構造である。開花パタンは温度や日長などの非生物的要因のみならず、受粉成功を高めるための花粉媒介者(ポリネーター)誘引や、ポリネーターを巡る生物間相互作用によっても影響を受ける。群集スケールの開花フェノロジー構造が生物間相互作用によってどのように形成されるのかを明らかにするには、似通った気候環境にありながらポリネーター相が異なる生態系間の比較が有効である。本研究は、赤道を隔てて同じような気候帯に位置する日本とニュージーランドの高山生態系で、高山植物群集の開花フェノロジー構造と訪花性昆虫の生活環を比較し、開花フェノロジー構造が形成される過程で植物一昆虫相互作用が選択圧として作用し得るのかを検証する。社会性ハナバチを欠くニュージーランド高山植物群集ではポリネーターへの依存度は一般に低く、開花時期の季節性は全体的に希薄となり、社会性ハナバチを有する日本の高山植物群集とは異なったフェノロジー構造が期待される。 初年度は、日本(大雪山と立山)とニュージーランド(南島オタゴ地方)の高山植物群集において、送粉系ネットワークと植物群集の開花構造を比較するための調査プロットの設定を行い、調査を開始した。日本の山岳域での調査は、6~9月にかけてそれぞれの山域で7~8回行った。ニュージーランドでの調査は、12、1、2月にそれぞれ10~14日間行った。初年度の植物群集開花フェノロジーを比較すると、ニュージーランドの高山植物群集では日本の高山植物群集に比べて個々の種の開花期間が長く、群落全体としては明瞭な開花ピークが見られなかった。これは、当初予想したパタンと類似した結果であり、高山植物の開花時期に作用する自然選択圧が、両地域間で異なっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内の調査地においては、調査地の設定、フェノロジーデータの収集、訪花昆虫調査など必要なデータの収集を開始した。国内データに関しては、大雪山と立山の山域比較に足りうる厚みのあるデータが収集できた。海外の調査地においては、2カ所の調査地を設定し、フェノロジー調査を開始した。この2カ所の海外調査地においては、生育シーズンを通した開花データのを収集することができ、初年度の成果としては、予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後、国内で同様の調査を継続する。海外の調査地ではさらに2山域を加え、より広域からのフェノロジーデータを収集する。また、前年度設置した2カ所のサイトについては、今後訪花昆虫相、柱頭付着花粉解析を行い、植物の開花フェノロジーと訪花昆虫との相互関係についての解析を行うためのデータを集積する。また、解析データに関しては、速やかに論文として発表していく。
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