研究課題/領域番号 |
23405007
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大原 雅 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (90194274)
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研究分担者 |
塩尻 かおり 京都大学, 次世代研究者育成センター, 助教 (10591208)
齊藤 玉緒 上智大学, 理工学部, 准教授 (30281843)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 植物間コミュニケーション / 誘導防御 / 血縁度 / sagebrush / 食害 |
研究概要 |
本研究で研究対象とするSagebrush(Artemisia tridentata)は北米の乾燥地域に生育するキク科ヨモギ属の低木種である。Sagebrushは食害などで葉が傷つくと強い匂い(HIPVs)を放出し、自身の防衛反応を誘導する。さらに、Karban et al. (2006)の報告ではHIPVs放出個体から60cm以内に生育する無傷の他個体でも、HIPVsを受容すると防衛反応が誘導されることが明らかになっている。また、HIPVsを分析したところ、その組成は個体によって異なっており、近接する個体同士で類似した組成を持つことが示唆されている。本研究は、この動物行動学の分野で検証された「利他行動」および「血縁淘汰」の進化が、植物においても存在するという発想にたち、その実証試みるものである。 本研究の2年目に当たる平成24年度は、主に「植物間コミュニケーションの適応的意義」に関する調査を行った。具体的な調査、実験内容は以下の2つである。 1)植物間コミュニケーションに関する操作実験:野外に生育する個体を用いて、摘葉処理、同定されたHIPVs暴露処理、植食者除去などの野外操作実験処理を行い、適応度に関わる形質(生存率、生長量、種子生産量)を測定した。また、パッチ状に個体が近接して生育する個体と、単独で生育する個体をマーキングし、それぞれの形質の比較調査を行った。 2)HIPVsと個体の血縁度の関係:生育地内に調査区(10×10m)を2つ設定し、各個体の空間分布を記録する。各個体に関してHIPVs組成(質・量)を明らかにする。さらに、各個体より葉の一部を採集し、マイクロサテライトマーカーをもちいた遺伝分析を行い、個体の近縁度を評価し、二次代謝物質の組成の類似性と遺伝的近縁度の相関を調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度より繰り越した調査、研究もあったが、概ね当初の予定通りに遂行することができている。これまで2年間の成果を踏まえ、平成25年度(最終年度)の調査、研究を行う。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成25年度は、主に、昨年度に引き続き「植物間コミュニケーションの適応的意義」の継続研究を行う。具体的には以下の2つの項目に関する調査、研究を行う。 1)植物間コミュニケーションに関する操作実験:植物の適応度には年次変動が影響すると考えられるため、1年目と同様の処理を行い、適応度に関わる形質の測定を行う。 2)HIPVsと個体の近縁度の関係:前年に採集した種子を発芽させ、親子間・兄弟間のHIPVs組成をGC-MSにより分析しその類似性を調べる。また、血縁個体間・非血縁個体間でお互いのHIPVsにさらした場合の被食率を調べる。 そして、3年間で得られた実験成果をもとに動物行動学の分野で検証された「利他行動」および「血縁淘汰」の進化が、植物においても存在することの実証試みる。
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