研究課題/領域番号 |
23405009
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
曽田 貞滋 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00192625)
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キーワード | 適応 / 形態 / オサムシ / 陸貝 / 種多様性 |
研究概要 |
(1)中国における貝食性オサムシ亜族と陸産貝類の調査 貝食性オサムシ亜族と陸貝相の関係を調べるために,2012年6月に,研究代表者曽田が,研究協力者2名(ホシザキグリーン財団林成多,東北大学森井悠太)とともに,河北省,北京市での野外調査を行った.貝食性オサムシ亜族では,コウガオサムシ(巨頭型),アオカブリモドキ(狭頭型),マンダラオサムシ(狭頭型)が採集された.陸産貝類は16種が採集され,コウガオサムシの餌としては,Cathaica fasciola(殻径15mm程度)が多数確認された.アオカブリモドキが産する場所では,Bradybaena (Acusta) ravida(殻経21mm程度)が比較的大きい貝であったが,全般に小型の陸貝が多かった.これに関係してか,他の産地では大型となるアオカブリモドキが非常に小型であった.小型の陸産貝類が多いのは,降水量の少ない気候条件と関係しているものと思われるが,そのために,小型や巨頭型の貝食性オサムシにとって有利な餌条件となっている可能性がある.また河北省の北西部では,貝食性と考えられているクギヌキオオズオサムシ(巨頭型)も採集されたが,生息環境には陸産貝類が生息する形跡が見あたらなかった.雨季など特定の時期に軟体動物が出現するか,あるいはコウガオサムシが貝類以外の動物を餌としている可能性が考えられた. (2)クビナガオサムシ亜属Acoptolabrusの形態進化 東アジア東部,日本に分布するクビナガオサムシ亜属における狭頭型,巨頭型の分化過程を解明するために,2012年7月,連携研究者高見泰興が韓国において野外調査を行った.さらに,本亜属の標本に基づく形態調査と分子系統解析を行い,狭頭型の中から,ひとつの巨頭型の系統が分化したことを明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国の調査に関しては,巨頭型のコウガオサムシの生息状況の調査は順調に進んだが,河北省内の調査では貝類相の貧弱な地域で,十分なサンプルが得られなかった.また,計画では,秋季~冬季に,モロッコを中心とする地中海沿岸での野外調査を実施する予定であったが,現地協力者との連携がとれず,H23年度の実施を断念した.これらの点から,計画よりやや遅れていると自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度には,中国においては,巨頭型と狭頭型のヨロイオサムシ群の種が共存する甘粛省南部を中心に野外調査を行い,両型の共存と陸産貝類相の対応を明らかにすることが主要な課題となる.この調査については,中国の共同研究者と十分に打ち合わせを行い,6月中に実施する.また,地中海沿岸地域については,スペイン,イタリアの共同研究者と連絡をとり,詳細な情報を得てモロッコを中心とした野外調査を11月~12月頃に実施する.
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